(英エコノミスト誌 2019年8月31日号)

EUのサミットに参加するためブリュッセルを訪れたハンガリーのビクトル・オルバン首相(2019年7月2日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

冷笑主義が西側の民主主義国を蝕んでいる。

 民主主義とはクーデターや革命で銃を突きつけられて命を絶たれるものだと一般に考えられている。ところが昨今では、国民の名においてゆっくりと絞め殺される可能性の方が高い。

 ハンガリーの例を見てみよう。

 政権与党のフィデス・ハンガリー市民同盟は議会で押さえた過半数議席を利用して、規制当局を手玉に取ったり、産業界を牛耳ったり、裁判所を支配下に置いたり、メディアを買収したり、さらには選挙のルールを操作したりしている。

 本誌エコノミスト今週号の特集記事で紹介しているように、同国のオルバン・ビクトル首相は法律を破る必要がない。議会を動かして法律の方を変えてしまうことができるからだ。

 秘密警察を使って夜中に政敵を排除する必要もない。言いなりになるメディアや税務署を使えば、暴力を振るうまでもなく政敵の鼻をへし折れるからだ。

 形の上ではハンガリーは活気に満ちた民主主義国だが、内実は一党独裁国家なのだ。

 ハンガリーに作用している力は、21世紀のほかの国体も侵食している。

 与党の「法と正義(PiS)」がフィデスのマネをし始めたポーランドのような新しい民主主義国だけでなく、英国や米国といった最古参の民主主義国でも始まっている。

 古くからの民主主義国がすぐに一党独裁国家に転じるわけではないが、崩壊の兆しがすでに見受けられる。ひとたび崩れ始めてしまったら、止めるのは恐ろしく難しい。