(英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年8月30日付)

ブレグジットに反対して英国の首相公邸前で反対のプラカードを掲げる人(写真:AP/アフロ)

 欧州連合(EU)から飛び出すことに反対する議員たちがすぐに反乱を起こさない限り、10月末に実現する可能性が最も高いのは合意なきEU離脱、すなわちハード・ブレグジットである。

 EUとの合意にこぎ着けるには、アイルランドでの通常の国境管理に代わる実際的で運用可能な仕組みをボリス・ジョンソン首相が考え出さねばならない。

 英国政府には、合法的な貿易、詐欺、および密輸の3点について機能する仕組みを編み出す時間が3年間あったが、いまだに「トラステッド・トレーダー(信頼できる貿易事業者)制度」やナンバープレート認識、国境から離れた場所での検査などについてブツブツ言うだけにとどまっている。

 政府によるイノベーションと言えば、ブレグジットの過程に対する議会の精査に代わる措置――10月半ばまでの議会閉会――を講じたことだけだ。

 もっと優れた施策を打ち出さなければ、EUとの合意は不可能になる。その意味で、英国とブレグジットとのまやかしの戦争は終局に近づきつつあり、本物の戦いが始まろうとしている。

 英国経済には、その戦いへの備えができていない。国内総生産(GDP)は第2四半期に0.2%縮小した。

 自動車業界の一時的な生産休止によって歪んでしまった数字ではあるものの、経済成長の基調は弱々しいと言うほかない。

 最新の信頼感指数も惨憺たる有様で、英国経済がほかの欧州諸国よりもはるかに大きなブレグジット・リスクにさらされていることを裏づけている。

 生産性の水準も再び低下しており、企業は相変わらず投資を先送りしている。目を見張るほど好調だった労働市場にも、潮目が変わる可能性を示唆する兆しがある。