(英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年8月23日付)

北京のアップルストアで自身のiPhone画面を見ている女性(写真:AP/アフロ)

 政治的な論争は原理原則を掲げて展開されることが多い。しかし、中国とハイテク戦争を戦う米国を否定する最も強力な主張は、善悪とはほとんど関係がない。

 その主張とは、とにかく米国はこの戦いに負ける公算が大きい、ということだ。

 確かに、権利を侵害されたと米国政府が感じることには一理ある。

 米国は中国で自国の知的財産を守るために1990年代の初めから二国間協定をいくつも結んできたが、中国側はそれらをことごとく、目を見張るようなやり方で破ってきたからだ。

 何十年もの間、中国のショッピングモールではナイキの靴の偽物やアップルの「iPhone(アイフォーン)」の模造品、数々の米国ブランドのコピー商品が飛ぶように売れていた。

 一方、商業上の機密や企業秘密も盗まれていた。

「米国知的財産権窃盗に関する委員会(CTAIP)」の推計によれば、米国が被った損失は2015年だけで最大5400億ドルに上った。米国の中国に対する貿易赤字をも上回る金額だ。

 しかし、怒りを覚えるのはもっともだとしても、それ自体は、勝利をもたらす戦略にならない。

 ドナルド・トランプ大統領は先日、「貿易戦争が長引けば長引くほど、中国は弱くなり、我々は強くなる」と大見得を切った。