(英エコノミスト誌 2019年8月10日号)

中国本土への容疑者引き渡し条項の撤廃を求めて香港国際空港の到着ロビーに集まってきたデモ参加者(8月9日、写真:ロイター/アフロ)

中国が残虐な対応に出たら、その結果は悲惨なものになる。それも香港にとってだけではない。

 夏になり、熱気は息が詰まるようだ。何千人もの学生が数週間前から抗議行動を続けており、自由を要求している。

 そんな要求を是認する用意のない当局は、学生たちに家に帰れと警告しているが、学生たちは耳を傾けない。仕事に向かう社会人たちの間には、学生へのいらだちと同情の両方が生まれている。

 この行動がどんな結末を迎えるのか、誰もが気にかけている。ただ、数百人、いや数千人の市民が犠牲になったのかもしれないあの虐殺と同じくらい残忍な結果を予想する向きは、ほとんどいない。

 北京の学生による抗議行動が頂点に達した1989年6月4日から30年経った今も、天安門広場とその周辺で何人が殺害されたかは誰も知らない。

 この暗黒時代に関する情報のやり取りを中国政府が厳しく取り締まっている事実は、これがいかに重大な出来事であったかを暗に認めているに等しい。

 しかし、中国の現体制と中国、そして世界全体との関係を形作ったのがあの天安門事件であることは、今では誰もが知るところだ。

 もし中国が香港に介入し、たとえ天安門よりはるかに流血沙汰が少なかったとしても、同じくらい大きな波紋を呼ぶことになるだろう。

 始まりは、香港にいる刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡し、共産党の支配下にある裁判所で裁判にかけることを可能にする法案への反対運動だった。それが今では、天安門事件以降で最大の反体制運動に発展している。