(英エコノミスト誌 2019年8月3日号)
フォルクスワーゲン「ビートル」の最後の限定モデル。メキシコ中部プエブラの工場にて(2019年7月10日撮影)。(c)JUAN CARLOS SANCHEZ / AFP〔AFPBB News〕
増加が続くドイツの経常黒字には、所得格差の拡大が伴っている。
ミッテルシュタントと呼ばれる中小企業群、輸出、倹約――。
これらは皆、ドイツ国民が誇りとするものだ。これらのおかげで、ドイツは2016年以降、世界最大の経常収支の黒字を計上しており、昨年は黒字額が3000億ドル(国内総生産=GDP=比7.3%)に迫った。
国内での投資より貯蓄が多く、輸入より輸出が多いことを示すこの兆候は、倹約家のドイツ人に米国製品をもっと買ってほしいと考えているドナルド・トランプ米大統領の怒りを買った。
国際通貨基金(IMF)は長年、過剰貯蓄を嘆いてきた。
先月は世界的な不均衡に関する年次報告で、ドイツの経常黒字は経済的なファンダメンタルズで正当化できる規模より「かなり」大きいという警告を繰り返した。

別の報告書では、経常黒字の拡大には格差拡大が伴っていることを示す証拠を挙げた(図参照)。
経常収支と格差を結びつけるリンクは企業の高収益だとIMFは指摘している。
2000年頃、急成長を遂げる新興国が付加価値の高いドイツ製品を大量に買い始めると、ドイツの輸出が急拡大した。
これが他国よりケチな福祉手当と賃金抑制を促す政策と相まって、企業収益を押し上げた。
だが、企業の成功は、比較的貧しい家計には何の役にも立たなかった。富の分配が極めて不平等だからだ。