(英エコノミスト誌 2019年8月3日号)

しかし、求職者の一部は自分を責めるしかないのかもしれない。
北京市北部の展示場に作られた仮設ブースの周りを、大勢の若者が歩き回っている。ここは、就職先が見つからない大学卒業生のために地方政府が企画した合同企業説明会の会場だ。
ほかの就職希望者たちと同様に、スー・ジエンさん(仮名)も企業の採用担当者に手渡す履歴書をたくさん用意してやって来た。だが、北京の2流大学を6月に卒業したスーさんの表情は冴えない。
最も人気があるのは巨大国有企業、中国鉄路のブースだ。同社の採用担当者によれば、大学卒の新入社員の給与は月額で約4000元(580ドル)だという。
北京の平均給与の半分にも満たず、同市の最低賃金の2倍にも届かない。それでもスーさんは履歴書を提出した。そして、「仕方ないじゃないですか。応募者が多すぎるんですから」と嘆いた。
中国の大学が今年の夏に社会に送り出した卒業生の数は830万人。10年前の570万人を大幅に超える記録的な水準で、香港の人口をも上回る。
また、多くの西側諸国でビザ(査証)の基準が厳しくなっていることから、外国の教育機関を今年卒業して帰国・就職活動を行う中国人の若者も50万人近くにのぼるだろう。
今は労働市場への参入に適したタイミングではない。中国経済は米国との貿易戦争に揺さぶられている最中で、経済成長率はほぼ30年ぶりの低水準に落ち込んでいる。
おまけに今年は、労働市場への新規参入者の3分の2が大学の卒業生で占められる。つい3年前でも半分程度だった割合が文字通り急拡大した格好だ。