(英エコノミスト誌 2019年7月27日号)

EU、ジョンソン首相の要求を一蹴 離脱案修正に応じず

英ロンドンの下院で演説するボリス・ジョンソン新首相(2019年7月25日撮影)。(c)HO / various sources / AFP〔AFPBB News

英国の新首相はスリルを約束しているが、深刻な転落に向かってひた走っている。


「みなさんが怖がっているように見えるでしょうか。怖いような気持ちでしょうか」

 ボリス・ジョンソン氏は自らを保守党の党首に、ひいては英国首相に選出したばかりの保守党員らにそう問いかけた。答えを求めない修辞疑問だったが、実際、不安そうな面持ちの党員が多かった。当然だろう。

 英国の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が選択された3年前から数えて、ジョンソン氏は3人目の保守党の首相となる。

 また、離脱期限の10月31日が迫っているのに、行き詰まった議会は、EUと合意した離脱協定案の支持を拒んでいる。合意なき離脱の可能性を前にして英ポンド相場は下落している。

 この苦境から抜け出すには、並外れた政治手腕が必要だ。ところが、保守党はギャンブルに走り、頼れる人物だとは誰も思っていないポピュリストを党首に選んでしまった。

 かつてウィンストン・チャーチルの伝記を書き、自分もそのタイプの政治家だと思われたがっているジョンソン氏は、第2次世界大戦以来最悪の英国の危機を受け継いだという意味では、同氏が敬愛してやまないチャーチルに似ている。

 ブレグジット(英国のEU離脱)、特に合意なき離脱が行われれば、経済が傷つくだけでなく、ちょうどいまホルムズ海峡で見られるように国の権益が脅威にさらされているこの世界で、外交的に孤立することにもなる。

 ブレグジットはスコットランドや北アイルランドとの絆を弱めてしまっており、英国にとっては「連合王国」の存在に関わるリスクだ。

 国中が暗い気分に覆われている時期だけに、保守党は、ジョンソン氏がジョークをちりばめた受諾演説で述べたように「自己疑念の張り綱を取っ払う」くらい元気に活動することを願っている。