会見するアスクルの戸田一雄・独立社外取締役(筆者撮影)

(大西 康之:ジャーナリスト)

 8月2日の株主総会直前にIFRS(国際財務報告基準)で連結子会社アスクルの岩田彰一郎社長に退任要求を突きつけたヤフーに対し、ガバナンスの権威が一斉に異論を唱え始めた。

「大株主なら何をやってもいいわけじゃない」

 7月23日には元パナソニック副社長の戸田一雄氏らアスクルの独立取締役が、独立役員会アドバイザーの久保利英明弁護士とともに記者会見し「大株主なら何をやってもいいということではないはず」(戸田)と訴えた。同日には日本の商法の大家、上村達男早稲田大学名誉教授も「退任要求は提携違反」とする法律意見書を出した。

 23日、都内で開いたアスクル独立委員会の記者会見には戸田氏のほか、アスクルの社外監査役の安本隆晴氏、弁護士の松山遥氏も参加した。

今回の一件で「親子上場」の是非が改めて問われている(写真は筆者)

 戸田氏は記者会見の冒頭で「(アスクルの個人向けネットショッピング事業)『ロハコを売れないか』と言ってきて『売れない』と答えたら『社長を辞めろ』。これでは支配株主の立場で圧力をかけているとしか思えない。1週間後には(株主総会で大株主のヤフーが岩田社長の取締役選任案に反対して)そうなってしまう。本当に悩んでいる」と苦しい胸の内を明かした。

 7月18日に岩田氏が記者会見で「ロハコ事業の譲渡を要求された」と語ったことに対し、ヤフーが「事業を譲渡する意向があるかどうか打診しただけ」とのコメントを発表したことについては、「実際には、事細かな条件を提示して譲渡を求めてきている」と反論した。

 その上で独立役員会の意見として、

(1)岩田社長退任の是非については、指名報酬委員会で議論・決議した後の交代は現場を混乱させ、企業価値にマイナスになる

(2)ロハコ事業の譲渡については、2018年12月にロハコ事業の再構築プランを発表したばかりであり、その効果を検証してから検討すべき

(3)(ヤフーが今後もアスクルにロハコ事業譲渡を求めるなら)支配株主であるヤフーとの利益相反取引であることを十分に理解し、対等な立場で交渉することが求められる

 の3つを公表した。