(英エコノミスト誌 2019年7月6日号)
英与党・保守党の党首選挙の第1回投票でトップに立ったボリス・ジョンソン氏。ロンドンの自宅前にて(2019年6月13日撮影)。(c)Glyn KIRK / AFP〔AFPBB News〕
今日の右派は、保守主義の進化ではなく、その拒絶だ。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は先日、リベラル(自由主義的)な思想は「時代遅れ」だと明言した。
本誌エコノミストがこれに同意しないと聞いても、読者は驚かないだろう。
なぜなら、プーチン氏が英フィナンシャル・タイムズ紙に語ったのは、リベラリズムは移民、文化的多元主義、ジェンダー・ポリティクス(性差による政治)の話だという「こじつけ」だったうえに、取り上げた対象も間違えていたからだ。
今日の西側世界で最も脅威にさらされている思想は、保守主義である。その困難の深刻さは、保守主義者でなくても分かるだろう。
米国で、そして英国でもおおむね成立しているような二大政党制においては、右派が政権を握っている。だがそれは、かつて保守主義の本質だった価値観を捨て去ることで手に入れたものにほかならない。
多くの政党が並立する国々では、中道右派が侵食されたり(ドイツやスペインなど)、形骸化したり(フランスやイタリアなど)している。
また、ハンガリーのように民主主義の伝統が短い国々では、右派が保守主義を試みることすらせず、そのままポピュリズムに転化してしまっている。
保守主義は、哲学というよりはむしろ気質である。この点については、哲学者のマイケル・オークショットの説明が最も優れている。