世界が注目する日本のHealthTech

 2025年、人口のボリュームゾーンである団塊の世代が全員75歳以上となり、日本人のおよそ5人に1人が後期高齢者という超高齢化社会を迎える。それに伴い、国内では社会保障費の急増をはじめ、医療や介護、福祉の分野で様々な問題が起こることが懸念されている。

 こうした中で、人々の「健康」への関心は日増しに高まり、テクノロジーで医療分野の課題を解決する「HealthTech(ヘルステック)」市場も活況を呈している。最近では異業種やスタートアップからの参入も増え、医療機関向けの技術やサービスだけでなく、予防医療やQOLの向上を支援する一般向けのサービスも増加してきた。同領域の現状を振り返りながら、今後の可能性を考察していく。

HealthTech市場の現状

 超高齢化社会の到来を控え、ますます期待の集まるHealthTech。関連サービスの種類は一般人が手軽に利用できるものから、医療従事者向けの専門性が高いものまで多岐にわたる。今回は、近年増えている一般企業や個人で導入できるサービスを中心に見ていこう。

 富士経済が2019年2月5日に発表した「ヘルステック・健康ソリューション関連市場の調査結果-2022年市場予測(2017年比)-」によると、2018年のヘルステック・健康ソリューション関連の国内市場は前年比9.4%増の2248億円が見込まれ、2022年には50.0%増の3083億円規模に達すると予測されている。

 同社は市場拡大の背景として、政府主導で進められている働き方改革や健康経営の推進、ストレスチェックの義務化などにより、企業による従業員の健康維持・増進への関心が高まり、関連サービスを積極的に導入する動きが活発化している点を挙げている。

 分野別では、「健康経営サービス」が市場拡大をけん引しており、中でも福利厚生代行サービスや、メンタルヘルスサービスが伸びているという。

「健康情報測定機器・治療器」分野は、消費者の健康意識および美容意識の高まりや、参入企業の増加などの要因により市場を拡大している。中でも消費者の注目が高まっているストレス測定器やAGE(終末糖化産物)測定器、ウェア型端末(スマート医療)、体臭測定器、スマート歯ブラシなどは今後伸びていくと推測されている。

 次に、利用者が家庭や店舗で検査・健診できる「注目検査・健診サービス」について見ると、健康増進施策の一つとして、企業や健康保険組合が従業員や組合員向けに導入するケースや、自治体が住民サービスとして活用するケース、販促キャンペーンのツールとして利用するケースも増えているという。

 最後の「健康プラットフォーム&生活習慣改善サポートサービス」は、モバイルアプリの登場や参入事業者の増加などにより伸びている。こちらも今後、従業員の健康増進を進める健康経営や健康保険組合の医療費削減、労働環境の整備等を利用に各サービスの導入が進むと予測されている。特に、健康管理ポータルサービスや健康ポイント・マイレージサービス、ダイエットや食事管理サービス、睡眠改善サービスなどの伸びが期待されている。

 このように同調査では、今後企業による従業員向けサービスで、さらなるHealthTech需要の増加が期待できるという分析が成されている。

 マクロミルが2018年12月20日に発表した「予防医療やスマートヘルスケアなど、新しい医療の取り組みに対する意識調査」によると、生活者の「予防医療」(病気の未然防止、病気の重症化や再発・病状の悪化の予防)という言葉の内容理解率は16%に留まったという。しかし同調査では、実際には生活者の約7割が「予防医療」に即した何らかの取り組みを行なっていることも明らかになった。

1年以内に「予防医療」として意識的に行なったこと(画像はマクロミルのプレスリリースより引用)

 加えて、今後の予防医療への取り組みについても「積極的に取り組みたい」が27.3%、「まあ取り組みたい」が61.9%となっており、合計すると9割近くもの回答者が予防医療に前向きという結果に。

 生活者が記録・計測した人体に関するデータを医療サービス等と連携する「スマートヘルスケア」の取り組みについても、「体重」40%、「歩数」32%、「血圧」20%といったように、普段からデータを記録・計測している生活者は多く、「血圧」のデータについては記録者の74%が「活用」していることも判明した。

医療・健康データのうち、記録・計測しているもの・活用できているもの(画像はマクロミルのプレスリリースより引用)

「人生100年時代」を迎えるにあたり、企業や個人単位でHealthTechサービスを活用しようという動きは活発化しているようだ。