メディアでも話題の『ファクトフルネス』。そのヒットの理由は?

 データを基に世界を正しく見る方法について、豊富な実例を引きながら分かりやすく解説した『FACTFULNESS(以下、ファクトフルネス)』(日経BP、2019年1月)。世界中で反響を呼んだ本書は、日本でもSNSで大きな話題を呼んだ結果、発売日を待たずして重版がかかり、発売から1週間で10万部、20日で20万部を超えるなど、ビジネス書としては異例のベストセラーとなっている。

 ビル・ゲイツやオバマ元大統領も絶賛する『ファクトフルネス』について、ポイントを押さえておこう。

世界のリーダーたちが絶賛する『FACTFULNESS』とは

『ファクトフルネス』が反響を呼んだ要因の一つが、冒頭で読者に出題されるクイズだ。例えば次のような、世界の事実に関するシンプルなクイズが13問紹介されている。

質問1 現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?
A 20%
B 40%
C 60%

 2017年、日本を含む14カ国に住む1万2000人を対象にこのクイズについての調査を実施したところ、唯一正答率が高かった13問目の質問を除けば、平均正解数は12問中たったの2問。全問正解者は0人で、12問中11問正解した参加者も1人のみ。全問不正解者は全体の15%に上ったという。ちなみに、先の質問1の正解はC「60%」で、日本人の正答率は7%だ。

 共訳者の1人である上杉周作氏が作成したオンライン版12のクイズで、実際に挑戦してみてもらえれば分かるが、どれも複雑な問題やひっかけ問題というわけではない。

 すべて三択式なので、仮にチンパンジーへ同じクイズを出題したとしたら、正解率はおよそ3分の1になるだろうと本書では記載されている。つまり、当てずっぽうに選べば12問中4問程度は正解できるはずだ。しかし、実際の平均正解率が3分の1を下回っている結果をみると、世界について間違った認識をしている人が多いことがわかる。

 間違いの傾向などを分析していくと、学歴や社会的地位の違いにかかわらず、多くの人が「世界はどんどん悪くなっている」という事実とは異なる勘違いをしていることが明らかになった。実際に多くの人が勘違いしている事実をひも解きながら、人々が無意識に行なっている偏ったものの見方や思い込みを廃し、事実やデータに基づいた正しい世界の見方について解説しているのが『ファクトフルネス』なのだ。