(英エコノミスト誌 2019年4月13日号)
米モンタナ州で行われた選挙集会で演説するドナルド・トランプ大統領(2018年10月18日撮影)。(c)Nicholas Kamm / AFP〔AFPBB News〕
4月初旬に米ニュージャージー州のメットライフ・スタジアム開催されたプロレスイベント「レッスルマニア」を見ている間、筆者が最初にドナルド・トランプ大統領のことを思い浮かべたのは、愛国歌「アメリカ・ザ・ビューティフル」の音量が小さくなるとともに夜空にヘリコプターが現れ、低空で旋回し始めたときだった。
ワールド・レスリング・エンターテインメント(WWE)が毎年開催するこの派手なスポーツ・エンターテインメントのショーに大統領がサプライズゲストとして登場するのではないか。
何と言っても大統領の政治手法はこのショーに負うところが大きいのだから――。
そして2度目は、7時間に及ぶこの格闘技の祭典も佳境に入り、ベテランのスターレスラー、トリプルHがペンチを使って憎きライバルの鼻からピアスを引き抜いたときだった。
あれはトランプ氏の閣僚の扱い方を思わせる光景だったが、同氏を思い浮かべた理由はそれだけではない。
ポール・レヴェック(トリプルHの以前のリングネーム)はWWEを所有するマクマホン一族の女性と結婚し、最近ではほとんどの時間をこの巨大企業の上級幹部として過ごしている。
事実を曲げるWWEのスタイルに則り、トリプルHはWWEの創設者ビンス・マクマホン氏の娘ステファニーと「ストーリー上で」結婚し、離婚した。
ステファニーとその兄シェイン(2人ともWWEの幹部で、WWEの制作物には悪徳重役やレスラーとして登場する)が結託し、親の事業を奪い取ろうとするストーリーの一環だった。