日本ではまだあまり認知されていない「SalesTech」とは

 企業の販売活動を担う営業担当者の業務は広範にわたり、労働時間も長時間になりがちだ。Web会議システム「bellFace」を展開するベルフェイスが全世代の営業職1000人を対象に行った「営業職の労働時間と働き方改革に関する意識調査」結果(4月1日発表)によれば、未だ過半数を超える職場が働き方改革に取り組めていないという。

 また同調査では、働き方改革に取り組んでいる企業であっても、取り組み開始前後で残業時間が「変わらない」と感じている現場担当者が一定数(38%)存在することも明らかになっている。

 このように営業職の業務効率化はなかなか進まないが、欧米ではテクノロジーで営業現場の課題を解決する試み「SalesTech」に注目が集まっている。今回は、国内でも認知を広げつつある同領域について見ていこう。

営業職=長時間労働? 現場の効率化が進まない理由とは

 働き方改革が叫ばれる中、なかなか労働時間の削減が進まない営業職。現場の改善が進まない理由は一つではないが、まず挙げられるのは人的資源の不足だ。

 国立社会保障・人口問題研究所が発表している「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によれば、1995年時点では8726万人だった国内の生産年齢(15~64歳)人口は2015年で7728万人に減少。今後も減少が続き、2029年、2040年、2056年にはそれぞれ7000万人、6000万人、5000万人を割り込み、2065年には4529万人になると予測されている。

 ITコンサルティング・調査会社のアイ・ティ・アール(以下、ITR)が2018年6月に行った「営業力の強化・レベルアップに向けたSalesTech活用ニーズ調査」でも、多くの企業が営業活動における最重要課題として「営業人員が不足している」ことを挙げている。

 加えて「営業担当者ごとの売上げの差が大きい」ことや「営業担当者の育成に時間がかかる」点に悩まされる企業も多く、これらの3項目はいずれも4割を超える企業で重要課題として認識されているという。

 業務効率化を図り、限られたリソースの中で生産性を高めていこうとする試みは様々な業界・職種で行われている。とりわけ営業現場では、飛び込み訪問やコールドコールといった、旧態依然とした手法が用いられる場面も少なくない。

 さらに、一人一人が多忙なこともあり、意識してチーム内で情報共有を行わない限り、スキルが属人化してしまいやすい。その結果、いつまで経っても担当者間における能力差が埋まらず、なかなかチームの生産性が向上しないこともままあるだろう。

 そうした状況を打破するため、既に国内でも顧客管理を支援する「CRM(Customer Relationship Management)」や、営業活動を可視化する「SFA(Sales Force Automation)」といった営業支援ツールの導入が進んでいるが、担当者の営業力の底上げや強化には繋がらず、期待するほどの成果が得られていないという企業も多い。

 前掲したITRの調査によれば、SFA導入済の企業は「案件管理・顧客管理の見える化/効率化」についてはある程度の効果を感じているものの、2大項目である「提案力の強化」や「営業スキルの標準化」については「どちらかと言えば効果なし」に近い評価を下している。

SFA導入時の期待と導入後の効果(画像はITRのプレスリリースより引用)

 こうした、従来のアプローチでは解決しづらかった課題を解決する手段としても大きな注目を集めているのが「SalesTech」である。それでは、真に営業活動の成果を最大化する「SalesTech」とは、一体どのようなものなのだろうか。