デリーの街の「Bloody Sunday」の解説(筆者撮影)

 「2020年の大統領選挙はもうすぐ。歴史の『Right side』に立ちましょう。愛と憎しみの狭間で『Moral Choice』をしましょう」

 「Let’s do the right thing.」

 3月22日から日本でも劇場公開されているスパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』(2018)。

 2月に行われたアカデミー賞授賞式では脚色賞を受賞したリー監督が、400年前アフリカから「盗まれた」祖先の歴史を、「先住民虐殺」にも言及しながら語り、こうつけ加えた。

 ドナルド・トランプ大統領が、さっそく、ツイッターで反応。

 「his racist hit on your president」と非難、アフリカ系米国人に「almost any other pres」より多くのことをしていると「反論」した。

 『ブラック・クランズマン』は、物語が終わると続いて、2017年夏、バージニア州で起きた白人至上主義への平和的抗議デモでの惨劇とそれに対するトランプ大統領の発言が映し出される。

 以前から、自らの作品名をかけ「Do the right thing」と、呼びかけているリー監督は、公然たる差別行為が存在する状況が今も現実にあること、そして重い社会的責任を負う超大国の元首とは思えない「人権」への発言(多くはtweetだが)を、映画で後世へ伝えるべく、しっかり記録している。

「我々は行進(March)する。アイルランド分割以来、ここ北アイルランドのカトリックは差別に苦しんできたからだ」

 「Derry Civil Rights Association」(デリー公民権協会)の横断幕を背に、北アイルランド出身の俳優ジェームズ・ネスビット演じる公民権活動家でもある北アイルランド議会議員アイヴァン・クーパーが会見する姿から、『ブラディ・サンデー』(2002/日本劇場未公開)は始まる。

 (「Derry(デリー)」とは北アイルランドの都市だが、カトリックの呼び名。プロテスタントなら「ロンドンデリー」。立場によって異なるわけだが、とりあえず、今回のコラムでは「デリー」と表記していく)

 このとき、「英国の一部」、北アイルランドで「公民権」を巡り、もがいていたのは黒人でも移民でもなく、白人の住民。歴史的に差別を受けてきたカトリックの住民の平等を求めていたのである。

 映画は、クーパーと英軍フォード少将の会見を、交互にみせていく。