さいたま新都心(さいたま市)の夜景

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

 私は兵庫県出身だが、現在は埼玉県川越市に住んでいる。この地に居を構えてほぼ30年になる。文句なしの埼玉県民である。娘夫婦や孫も浦和に住んで、浦和レッズを夢中になって応援している。孫娘などは「埼玉愛」に満ちあふれている。2年程前だったが、中学1年生だった彼女が「埼玉は甲子園出場校を2校にすべきだ」といきなり主張し始めたのだ。私が「大阪だって、神奈川だって1校だよ。それは無理だよ」と言っても、断固として譲らないのである。

 なんと埼玉愛の強いことかと驚くと同時に、自分が住んでいるところをそこまで好きになるというのは素晴らしいことだと思ったものだ。

やっぱり東京には負けているが・・・

 孫の世代は、「ダ埼玉」という言葉もほとんど知らないと思う。最近、あまり耳にしなくなった。だが一時は、大いに流行ったものだ。この言葉は、「ダサイ」と「埼玉県」をつなぎ合わせた造語で、埼玉県や県民を「野暮ったい」「あかぬけない」と揶揄したものだ。1980年代にタレントのタモリが使い始めたそうである。

 当時、埼玉県は畑和(はた・やわら)県政だったが、「ダ埼玉」と揶揄されたことを相当深刻に受け止めたようで、イメージアップのための調査研究グループを設立したそうだ。さらには県発行の広報誌『県民だより』(1983年9月号)で紙上討論会を開き、畑和知事、小野文雄 埼玉大学名誉教授、埼玉県所沢市出身のタレント、所ジョージらのコメントを掲載したそうである。それを読んでみるとなかなかほほえましい。それぞれのコメントの趣旨を紹介すると次の通りである。

“県民意識調査では、86%の人が「埼玉県を好き」と答えている。「あかぬけない」「田舎臭い」というのは、東京との比較であり、埼玉には埼玉ならではの、例えば「人情味がある」「緑が多い」とかの良さがある”(畑和知事)