(英エコノミスト誌 2019年2月16日号)
米アマゾン・ドットコムの第2本社の建設が予定されているニューヨーク・クイーンズ地区ロングアイランドシティー(2018年11月7日撮影)。(c)Don EMMERT / AFP〔AFPBB News〕
ジョフ・ベゾス氏によるタブロイド紙への反撃は、不安になるほど希有な事例なのかもしれない。
アマゾン・ドット・コムを率いるジェフ・ベゾス氏と米国のタブロイド紙ナショナル・エンクワイアラーを経営するデビッド・ペッカー氏との対決でとりわけ興味深いのは、スーパーマーケットで売られている米国のスキャンダル新聞が2019年にこれほどの重要性を帯びてくることだ。
紙媒体の古いビジネスモデルはインターネットによって一掃されたうえに、セレブのゴシップを載せた新聞・雑誌が売り場で放っていた魅力もソーシャルメディアのせいで衰えてしまったからだ。
ベゾス対ペッカーの争いをつぶさに見ていくと、この一件はアマゾンの創業者にとって一応の勝利であることと、このタブロイドにとっては最後のひと頑張りであることとがうかがえる。
だが、それと同時に、権力というものが21世紀に入っていかに複雑化し、特定の人物に集中してきたか、そしてそれゆえに権力の操作がいかに可能になっているかについての憂慮すべき教訓も込められている。
この物語は主にオンラインで展開されてきた。
まず今年1月9日、ベゾス氏が妻マッケンジーさんと離婚することで合意したとツイッターで発表した。
するとその数時間後にエンクワイアラー紙が、ベゾス氏の不倫を暴露するとぶち上げた。