2018年イグノーベル賞授賞式でレクチャーする堀内朗氏。(写真:AP/アフロ)

 こんにちは、実はノーベル賞よりもイグノーベル賞が好きな小谷太郎です。

「人々を笑わせ、それから考え込ませる業績」に与えられる「イグノーベル賞」。2018年は物理学賞、平和賞、経済学賞などが、10分野の研究に授与されました。

 日本からは、昭和伊南(いなん)総合病院の堀内朗(ほりうち・あきら)氏が「座位で行う大腸内視鏡検査―自ら試して分かった教訓」*1という研究で「イグノーベル医学教育賞」を受賞しました。

*1https://www.giejournal.org/article/S0016-5107%2805%2903012-9/abstract

 メディアは「日本人が12年連続受賞」と浮かれて報じました。イグノーベル賞の受賞を「ユニークな発想が評価」「これが真の研究」などと讃える反応も見受けられます。

 しかし、このイグノーベル賞という「賞」は、受賞をはたして無邪気に喜んでいいものでしょうか。この賞の対象は、愉快で無害な科学論文ばかりではありません。イグノーベル賞はこれまで、詐欺まがいの疑似科学や愚かしい政治行為に対して、辛辣な批判の意図を込めて授与されてきた伝統を持つのです。

2018年のイグノーベル賞

 2018年のイグノーベル受賞研究を紹介しましょう。イグノーベル栄養学賞は、「人肉食から得られるカロリーが、他の伝統的な食事から得られるカロリーよりも顕著に低いことを算出」*2した功績で、英国ブライトン大のジェームズ・コール博士に授与されました。

*2https://www.nature.com/articles/srep44707

 旧石器時代の化石人骨には、時おり人肉食の痕跡が見つかります。頭蓋骨基底を割って脳を取り出した跡や、骨を折って髄をすすった跡や、石器による調理の跡などです。