(英エコノミスト誌 2018年10月6日号)
孔子生誕の記念式典(2018年9月28日撮影)。(c)CNS/張瑶〔AFPBB News〕
しかし、取り繕うということを完全にやめてしまうのは有害無益かもしれない。
ホワイトハウスの高官にとって、中国政府にケンカを売り、そのアイデアを孔子から授かったと主張することは、度胸のいることだ。
国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長のマット・ポティンガー氏は9月29日、米ワシントンの中国大使館でのスピーチで、まさにそれをやってのけた。
ポティンガー氏は、実態を隠して取り繕うことの危うさを厳しく諭す孔子の教えを引用し、トランプ政権が中国を米国の競争相手と位置づけたことを真剣に受け止めるよう説いた。
さらに、そのような関係の変遷を無視すれば誤算を招くことになると付け加え、中国語に切り替えて次のような儒教の教えを暗唱した。
「名正しからざれば則(すなわ)ち言(げん)順(したが)わず、言順わざれば則ち事ならず」――。
これは、かなり重要な瞬間だった。行間を読んでほしい。ドナルド・トランプ大統領の側近が、中国の台頭を温かい言葉で歓迎する時代は終わったと宣言したのだ。
儒教ではこの教えを「正名論(せいめいろん)」と呼ぶ。
米中間の貿易摩擦が激化するなかで、両大国は相手を非難する言葉遣いに気をつけている。中国政府の高官は、ナショナリズムに火を付けることを避けている。