自国で死ねないのは「非道」、豪制度を批判 スイス自殺ほう助機関

デービッド・グドール氏。出身地の豪パースにて(2018年4月30日入手)。(c)AFP/EXIT INTERNATIONAL〔AFPBB News

 2018年5月10日、スイスのバーゼルで、104歳になるオーストラリア人科学者デービッド・グドール氏が自殺幇助団体の介助を受けて自殺を遂げた。いわゆる「安楽死」である。

 報道によれば、彼は植物学と生態学が専門でフィールドワークに研究者人生を捧げてきたのだが、高齢で車いす生活となり、視力も衰えてきた。屋外を自由に移動することもままならなくなり、数年前から「人生が楽しくなくなった」と感じるようになっていたという。

「人生終焉の法」

 今や「人生100年時代」と言われる長寿社会になった。喜ばしいことではあるが、人々の寿命が伸びれば伸びるほど、彼のように「もう十分生きたし、人に迷惑をかけないで死にたい」とか、「生きるのに疲れた」「友人はもういない、新たな人間関係を作る気力がない」「このまま朝が来なければいいのに」と考える人が現れても、特段不思議なことではない。

 しかし、自死することは簡単ではない。そこで、医師の手を借り、苦痛なく死に至る「安楽死」に対する関心が世界的に高まっている。

 日本では、脚本家の橋田壽賀子さんが『安楽死で死なせて下さい』(文春新書)という本を書いて議論を巻き起こしたが、現実には、本人が望まない延命治療を控えたりあるいは中止したりする「尊厳死」の是非についても結論は出ていない。

 一方、冒頭のオーストラリア人研究者が渡ったスイスのように、利己的動機でなければ、自殺幇助が罪に問われない国がある。さらに安楽死が合法化されているオランダ、ベルギー、ルクセンブルク、そしてカナダ。介助自殺はアメリカの一部の州でも「尊厳死法」という名前の法律で認められている。