※本記事は記事公開時点(2018年4月)の出版情報に基づいています。

 あったかもしれない人生――。これまで続いてきた人生を見つめ直し、いったんリセットしたくなるときがある。新しい人生を始めるのは勇気がいるし、不安もある。でも、せっかくなら違った人生を経験するのもいいんじゃないか。

 しかし、新しい人生は自分の外側に落ちているわけではない。人生をリセットするということは、自分の殻を破り、内面にあるもう一人の自分を発見することでしかない。「このまま一本道の人生でいいだろうか」と迷う人、いままさに新しい人生の扉を開こうとしている人。これまで信じてきた価値観を、別の視点から見つめなおすきっかけとなるかもしれないお薦めの少女マンガを前回に続いて紹介しよう。

前回の記事はこちら
内面にあるもう一人の自分を発見できる少女マンガ8選 上
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52726

緑川ゆき 夏目友人帳

 少女マンガに縁のない方でも、『夏目友人帳』というタイトルをどこかで目にしたことがあるかもしれない。2003年に本作が発表された後、現在に至るまで既刊22巻を数え、2018年現在も連載継続中。累計発行部数は1100万部を超え、アニメ化を経て2018年9月には映画も公開予定の、知る人ぞ知る少女マンガである。

 主人公夏目貴志は、小さいころから妖(あやかし=この世をさまようヒトでないもの)が視える少年。幼いころに両親を亡くし、その特異な体質から周囲から疎まれ孤立して生きてきた。そんな夏目少年が、うっかりと強い力を持つ妖の封印を解いてしまったことで、物語は大きく動き出す。この妖、長い間、招き猫を依り代(よりしろ)としていたため、普段は人の目にも見える猫の姿で登場。ニャンコ先生の愛称で、夏目少年の大事な相棒となっていく。

 本作で重要な役割を果たすのが、夏目少年の祖母レイコが残した“友人帳”だ。若くしてこの世を去ったレイコにも特異な強い霊力があった。そのため、人々から排斥されたことで人を嫌い、妖と交流を持つようになっていた。とはいえ、その交流は生ぬるいものではなく、妖と力ずくの勝負をし、レイコが勝てば子分になる証として、紙に名を書かせるといったもの。妖は名を呼ばれれば、けして命令に逆らえない。そんな多くの妖の契約書を束ねた帳面が、友人帳なのである。

 友人帳に名前を記された妖は、自分の命を握られたも同然。なんとか取り返そうと、友人帳を祖母の形見として持つ夏目少年を巻き込み、様々な騒動を巻き起こす。