ロバート・モラー米特別検察官(2013年6月19日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / SAUL LOEB〔AFPBB News〕
(英エコノミスト誌 2018年2月24日号)
プーチン大統領の手口と、西側の対応が不十分な理由
ミハイル・ゴルバチョフ氏がペレストロイカ(改革)に取り組み始めた1980年代後半に、ロシアは西側と和解した。当時は、うそや冷戦時代の陰謀論で相手を倒そうとする企みを両者とも断念したと考えることができた。
しかし、今月16日に米国のロバート・モラー特別検察官がロシア人13人を起訴したことで、そうした考えがいかに脆く、壊れやすいものだったが明らかになっている。
モラー氏によれば、ロシアは2014年に、米国の民主主義を貶めようとする陰謀に手を染めた。ロシアの否認や裁判所の精査に耐えられる証拠もあると考えている。
ひょっとしたら、米中央情報局(CIA)がウクライナの反乱を煽動しているとウラジーミル・プーチン大統領が考えたために、クレムリンとつながりのあるオリガルヒ(新興財閥)の支援を受けたインターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)という組織が、インターネットに偽情報を流す「トロール部隊」や協力者に報酬を払うシステム、偽のアカウントなどを用意したのかもしれない。
その目的は、米国内の分断を拡大することにあった。そして後に、2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントン氏からドナルド・トランプ氏に票が流れるようにすることがそこに加わった。
欧州もこの工作の標的にされている。その詳細はあまり分かっておらず、モラー特別検察官の重点的な捜査対象にもなっていない。
しかし、ロシアは過激な思想を持つ政治家に資金援助を行ったり、コンピューターシステムをハッキングしたり、デモ行進を組織したり、うその情報を拡散させたりしたと考えられている。こちらの目的も、やはり分断を深刻化させることにあるようだ。