路線バスの安全は、IoTの活用でどのように向上するのだろうか。

「マイカー離れ」の風潮が広まる中、近年、公共交通機関の価値が見直されている。特に、鉄道の駅から離れた場所では、路線バスの需要は依然として大きく、また最近では、都市間を安価に結ぶ高速バスも一般的になってきている。

 しかし、そのようなバス需要の増加の一方で、気になるのは安全対策だ。バス会社はどのような安全対策に取り組み、またそこにどのようなテクノロジーが活用されているのだろうか。

 2017年5月、千葉県中南部でバス事業を営む小湊鐵道は、KDDIと共同で、IoTを活用した路線バスの安全対策について、実証実験を行った。事故につながるかもしれない「ヒヤリ・ハット」の、さらに前段階の事象を検出しようという取り組みだ。

人の手による安全対策にも限界がある

 小湊鐵道が今回の実証実験に取り組んだきっかけは、2016年9月に東京湾アクアラインで発生した事故だった。高速バスの運転手が脳出血を起こし、他の車に衝突した事故である。小湊鐵道 バス部 次長の小杉直氏は、安全対策の取り組みについて説明する。

小湊鐵道 バス部 次長の小杉直(こすぎ・ただし)氏。

「けが人がいなかったのは不幸中の幸いでしたが、その経験から、白紙ベースで事故防止に取り組まなければということになりました。そこで『セーフティファースト宣言』と掲げ、ソフト面、ハード面の両面で安全対策に取り組みました」

 ソフト面で力を入れているのは、乗務員の健康管理だという。事前のチェックとして、産業医や保健師など頻繁に面接を行い、日常からの生活習慣や健康の管理に取り組み、事前の兆候をキャッチしようと取り組んでいる。

 とはいえ、乗務中に急に体調を崩すこともあり、運転中にずっと付き添うのは無理があるので、マンパワーによる対策はどうしても限界がある。そのため、乗務員の教育や指導で、さらにできることはないか模索していたという。