1890年代のポピュリスト運動を彷彿させるトランプ現象
俺が俺が、の政治の世界だが、これほどまでに自らを自賛し、国をリードするのは俺しかいないと言い切る政治家志望者はちょっと見つかりそうにない。
それがまた、教育程度が低く、落ち目の産業で働くブルーカラーや農民の心をわしづかみにしているのだ。まさに大金持ちがポピュリズム(大衆迎合主義)の波に乗って指名レースのトップを走っている。
実は米国には以前にもこうしたポピュリズム運動はあった。1890年代、農民や労組を主体とした運動だ。
1875年の大恐慌以後の経済不安の中で、西部や南部のプアホワイトが不満をぶちまけて結成した「ポピュリスト・パーティ」(人民党)だ。1892年の大統領選挙には独自候補を立てて戦ったが惨敗している。
今回はそうした動きが共和党内部から出ている。しかも政治経験者たちを抑えて独走しているのだ。
大衆迎合という意味では黒人の元外科医ベン・カーソンもそうだ。民主党で言えば、左翼のバーニー・サンダーズ上院議員もリベラル派大衆迎合主義と言える。
トランプが既成の政治家たちに失望した大衆をどこまで引きつけておけるのか。いつ失速するのか。トランプは共和党指名に敗れた場合、第3の党候補として戦い続けるのか・・・。
民主、共和両党の大統領候補者選びは年をまたぎ、来年2月初めから始まる予備選に向けてますます熱を帯びてきた。
文中敬称略