米史上最悪のスキャンダルともいうべきウォーターゲイト事件から43年。
「張本人」だったリチャード・ニクソン第37代大統領が没してから今年は21年目にあたる。すでに忘却の彼方に去った感すらするニクソンが再びスポットライトを浴びている。
ここ数年、ニクソンが在任中に行ってきた内政、外交に関する国家安全保障会議(NSC)、国務、国防両省、連邦捜査局(FBI)、米中央情報局(CIA)、米軍統合参謀本部などの極秘文書や新たな録音テープが次々と解禁された。
その膨大な「埋もれていた機密文書」を2人のベテラン・ジャーナリストが徹底検証。その成果が出版されたからだ。
ベテラン・ジャーナリスト2人が「ニクソンの実像」に迫る
1人は「One Man Against the World: The Tragedy of Richard Nixon」(世界に歯向かった男:リチャード・ニクソンの悲劇)の著者、ティム・ワイナー。
ニューヨーク・タイムズの情報機関担当記者としてピューリッツアー賞を受賞、退社後はFBIの内幕を暴いた『Enemies: A History of FBI 』 やCIAの内部に踏み込んでその実態を記録した『Legacy of Ashes』(邦訳『CIA秘録:その誕生から今日まで』)を著している。
もう1人は『Being Nixon: A Man Divided』(『ニクソンであること:分裂した男』を書き上げたエバン・トーマス。
24年間ニューズウィーク記者として活躍したのち、ハーバード大学やプリンストン大学で教鞭をとったこともある。著書はロバート・ケネディ元司法長官やドワイト・アイゼンハワー第34代大統領などを題材した力作10冊がある。
ワイナーは、新たに解禁された文書を基になぜニクソンがここまで違法行為を含む悪事に手を染めてしまったのかを問い詰めている。そして「その悪意に満ち満ちた動機はニクソンという人間の性格から来ているとしか考えられない」と言い切っている。
一方のトーマスは、「ニクソンのユダヤ人嫌い、人種差別主義、他の人間を一切信用しない疑い深さ、それこそがニクソンという大統領の内政、外政の根源にある」と結論づけている。