恭賀新年――。

 A String of Pearls(真珠の首飾り)というのは今しがた調べたところ、グレン・ミラー楽団のスタンダードナンバーとして通っているようだが、実は近来、軍事方面でちょくちょく耳にするコトバである。

 中東・湾岸に向かう海上輸送路・シーレーンは、日本経済のみならず中国経済にとっても死活的に重要なライフラインだ。目下これを制するのは、横須賀に司令部を置く米第7艦隊の部隊、なかんずくそのジョージ・ワシントン空母戦闘群である。

第7艦隊かPLANか

 Google Earthで“Diego Garcia”を検索すると、インド洋に浮かぶ環礁が見えてくる。拡大すると、大きな滑走路に4発ジェットの輸送機だか、爆撃機だかが並んでいる様子が分かる。

 それらはすべて米軍軍事アセットで、しかも横須賀にある在日米海軍司令部の指揮下にある。

 横須賀の指揮権が、はるかインド洋央にまで及ぶことは案外知られていない。けれどもこれくらい、米海軍のシーレーン防衛に対する関わりを象徴する事実もない。

 中国人民解放軍海軍、英文表記の略称にいう「PLAN」は、当然ながらこの状態を不利と見る。

 また日米同盟の支配下に入らざるを得ないことを、愉快ならざる事態と思うからだろう、PLANと中国政府は、シーレーンに沿う要所に何かと投資を続け、いつの間にかいくつもの戦略拠点を築き上げた。直接的軍事施設があれば、民間物流拠点もある。

 いまパキスタンの港に始まり、海南島に至るそれら要衝の一つひとつを、真珠の玉に喩えてみる。つなげると、「a string」(紐、数珠繋ぎ)のように見えなくもない。

 中国の打った布石がそこにあぶり出されるのを見た米国防総省筋は、シーレーン沿いに威力を確保しようとする北京の意思に確固たるものがあると考えた。そして論者の中に、それを「真珠の首飾り」戦略と呼ぶ者が現れたわけである*1

*1=米国防総省ネットアセスメント局の委嘱を受けた軍事コンサルタントBooz-Allen-Hamiltonによる2005年のリポート「アジアにおけるエネルギーの未来」の中で、初めてこの言葉が使われているらしい。