多くのアメリカ軍事関係者たちは、安倍晋三首相が内閣を改造しても国防路線には変化がなく、集団的自衛権行使をはじめとする安倍路線が継続されるものと考えている。ただ、筆者の周辺で自衛隊の水陸両用能力取得の努力をよく知る人々の多くが極めて不思議に思っていることが2つある。

 1つは、機体購入費の数倍もの整備施設建造費、維持整備費、搭乗員整備員養成費などが必要となるMV-22Bオスプレイ中型輸送機を、自衛隊がいきなり17機も調達することである。

 そしてもう1つは、老朽化のためアメリカ海兵隊が「作戦にも維持延命にも限界が近づきつつある」(「連邦議会調査局R42723」2014年7月30日発行)と主張しているAAV-7水陸両用強襲車をこれまた52両も自衛隊が調達することである。

 本稿では、AAV-7問題について考えてみたい。

上陸したアメリカ海兵隊AAV-7(写真:筆者)

海兵隊が切望した「三種の神器」

 アメリカ海兵隊は、すでに1980年代には「陸地から発射される対艦ミサイルの性能の進化に伴って、沖合から陸地への接近は、将来的には水平線より沖合から実施する必要性がある」と考え始めた。