2013年末から2014年の冒頭にかけて、安倍晋三首相の靖国神社参拝が内外に大きな波紋を広げた。この参拝を中国と韓国の政府が公式に激しく非難した。米国のオバマ政権も「失望」を表明した。ロシアやEUも政府や議会のレベルで批判の声明を出した。

 日本の主要メディアでは、こうした「点」をつないで、「日本は安倍首相の靖国参拝のために世界で孤立した」(朝日新聞の再三の論調)と断じるような論調が多い。

 だが本当にそうだろうか。

太平洋戦争の激戦地、東南アジア諸国の反応は?

 靖国神社と一体化して語られる日本の軍事行動の肝心の舞台となった東南アジア諸国はどうだろうか。靖国神社が日本の対外的な軍事行動を象徴すると言うのならば、東南アジアこそ日本の首相の靖国参拝に最も激しく反発するはずだ。

 ところがそうではないのである。東南アジア諸国からは、政府レベルでの今回の首相の参拝への非難は1月7日の現在にいたるまでまったく出ていない。

 中国や韓国のように政府の公式声明として糾弾した国は東南アジアでは皆無なのだ。民間でも安倍参拝非難はほとんど出ていない。この事実は日本側としても正確に認識しておくべきである。

 本コラム(「日本人が知らない親日国家『20対2』の真実、安倍首相のアジア訪問で明らかに」)でも詳述したように、アジアの多数の国家の中でも、歴史問題を理由に日本を糾弾し、特に靖国問題で政府として日本を非難し続ける国は中国と韓国だけである。そんな実態が今回の動きでも立証されたと言えるのだ。