10月28日昼、北京の天安門前でウイグル族一家3人の乗る車両が多くの観光客を死傷させた挙句に大炎上した。11月6日朝には山西省太原市の共産党委員会ビル前で連続爆発事件が起きた。日本のマスコミなどはこれら「テロ事件」を、あたかも中国が大混乱に陥っているかのごとく、大々的に報じている。

 一部には、「中国崩壊の前兆か」とか、「中東と関連した自爆テロなら大事件だ」などと煽る向きすらあった。おいおい、一体何を血迷っているのか。

 10日で2件の中国型「テロ事件」が起きたぐらいで、習近平指導部に「さらなる衝撃」など走るものか。生まれつき天邪鬼の筆者は最近こう嘯(うそぶ)いている。(文中敬称略)

氷山の一角

山西省共産党委前爆発で1人死亡、8人負傷 中国

中国・山西省太原市にある同省共産党委員会の建物前で起きた爆発で割れた車両のガラス〔AFPBB News

 筆者がこの種の事件に過剰反応しない理由は2つある。第1は中東の「ジハーディスト」「サラフィスト」たちの過激分子のテロ活動を実際に見聞きしたことがあるからだ。

 今から思えば、1980年代前半と2003~04年の2度のバグダッド勤務で、テロにも「プロ」と「アマチュア」があることを学んだのだと思う。

 第2に、最近中国ではこの種の事件が頻繁に起きており、過去10日間に天安門や太原で起きたことなど氷山の一角に過ぎないと思うからだ。以下の通り、過去十数年間の報道だけでも、中国ではこの種の事件が何度も形を変えて発生している。若干長くはなるが、重要なので少し詳しく記しておこう。

●2000年2月 天安門広場で湖北省出身の農民男性が爆弾を爆発させ死亡
●2001年1月 天安門広場で気功集団7人が集団焼身自殺
●2003年2月 北京大学、清華大学の食堂で爆弾が爆発
●2005年9月 天安門広場の花壇で小規模爆発

●2008年7月 雲南省昆明で男性が2台のバスを爆破
●2008年7月 河北省の警察署で爆弾が爆発
●2008年12月 男性がカフェで自爆テロ
●2008年3月 ウイグル族女性が北京行き航空機でテロ未遂
●2008年8月 新疆ウイグル自治区で北京オリンピック妨害テロが相次ぐ

●2009年6月 四川省成都で失業中の男がバスに放火
●2009年6月 広東省の工場でウイグル族労働者が漢族に襲われ2人死亡
●2009年7月 新疆ウイグル自治区ウルムチでウイグル族学生による大規模暴動発生

●2010年7月 湖南省長沙で事業に失敗した男が空港のシャトルバスに放火
●2010年8月 新疆ウイグル自治区アクスで群集に爆発物が投げ込まれる
●2010年10月 天安門広場近くで天津出身の夫婦が自家用車に火を付け自殺を図る
●2010年10月 北京の地下鉄ターミナル駅付近で爆発

●2011年5月 江西省撫州で自宅を解体された男が政府関連庁舎三ヶ所を爆破
●2011年6月 天津の地元政府ビルの近くで爆発物を爆破
●2011年7月 新疆ウイグル自治区ホータンでウイグル族が派出所を襲撃、14人射殺
●2011年10月 天安門広場近くで湖北省出身男性が焼身自殺を図る

●2012年2月 新疆ウイグル自治区カシュガルでウイグル族グループが漢族を斧等で襲う
●2012年11月 河南省で陳情者とみられる障害者が自爆

●2013年6月 福建省アモイで生活手当至急に不満の男がバスをガソリンで放火
●2013年6月 新疆ウイグル自治区でウイグル族と警官が衝突
●2013年7月 警察官の暴行に抗議した車椅子の男が北京国際空港で爆発物を爆破
●2013年4月 新疆ウイグル自治区カシュガルでウイグル族武装グループと警官が衝突
●2013年9-10月 新疆ウイグル自治区カシュガルでウイグル族15人射殺、100人逮捕