7月26日、防衛省は「防衛力の在り方検討に関する中間報告」を公表した。多くのメディアが「年末に策定する新防衛大綱の中間報告」と報道していたが、これは正確ではない。防衛計画の大綱は政府全体で策定するのであり、防衛省が単独で策定するものではない。
安倍晋三政権は発足後、「現下の状況に即応して我が国の防衛態勢を強化していく観点から、現大綱を見直し、政府として本年中に結論を得る」こととした。
大切なのはハードよりソフト
これを受け、防衛省は政府全体の検討に資するよう、防衛副大臣を委員長とし、省内で「防衛力の在り方検討」を実施してきた。今回の報告は、これまでの省内検討の中間結果を防衛大臣に報告したものである。
中間報告では、中国を念頭に離島防衛について、航空・海上優勢の維持や海兵隊的機能の整備が重要と指摘している。また警戒監視能力強化のため「高高度滞空型無人機の導入等」についても言及した。
サイバー攻撃対策については、防衛省だけで対応できるものではなく、「米国等の友好国や民間企業との連携・協力の強化策を検討」すべきとし、専門家の育成についても述べている。
そのほか、自衛隊と米軍との役割・任務分担の見直し議論を通じた日米同盟の強化、およびガイドラインの見直しまで踏み込んだ。またC4ISR(指揮・統制・通信、コンピューター・情報・警戒監視・偵察)能力向上のため、宇宙空間の利用を推進にも言及している。
筆者は中間報告が指摘した内容に対しては、全く異論はない。ただ、内容が基本的にハードウエアの整備に限られており、防衛力を使ううえでのソフトウエアの検討、特に現行法制の再検討には全く触れられていないところに、いささか違和感を感じた次第である。
省内検討という限界があるのかもしれない。だが、現大綱の「動的防衛力」についても、「シームレスな対応」を制約してきたのは、現行法制上の問題であることを最も認識しているのは防衛省であるはずだ。
安全保障環境に適合した防衛法制再検討の必要性を痛感しているはずの防衛省が、「在り方検討」で全く触れていないはなぜだろう。もし、防衛法制検討のハードルが高すぎるとして、先送りしていたなら、所轄官庁として怠慢の謗りは免れ得ない。
いかに優れた兵器体系を装備し、いかに優秀な人材を確保し、そしていかに合理的な部隊編成をしたとしても、国家としてこれを活用できる適切なソフトウエアがなければ、防衛力として機能しない。まさに宝の持ち腐れであり、防衛力は「張子の虎」と化す。