国会論戦の席で「明後日解散する」と明言した首相は、おそらく憲政史上例がないことだろう。解散を求めていた自民党や公明党も予想だにしていなかった。民主党内でも、事前に知っていたのは岡田克也副総理、藤村修官房長官ら、ごく少数だったと言われている。輿石東幹事長ですら、当日聞かされたという。
大した決断である。「嘘つき」などという低レベルの批判は、これで一気に吹き飛んだ。自民党の安倍晋三総裁は、受けて立つとかろうじて見得を切ってみせたが、心の動揺はテレビ画面からも伝わってきた。
私の手元に、複数の閣僚経験もある自民党衆議院議員の政治資金集めのパーティーの案内状がある。日にちは12月17日で場所は都内のホテルとなっている。とぼけた案内状になってしまった。まさか12月16日の投票日の翌日に開くことはないので、中止になることは確実だ。
年内解散をあれだけ強く迫っていた自民党だが、実は腹の中では想定していなかったということである。
3党首を圧倒した野田首相
党首討論での野田佳彦首相の対応は見事なものだった。私自身も、長い間国会論戦に参画し、見てきたが、14日の党首討論ほど面白い論戦はなかった。論理でも、覚悟でも、弁論でも野田首相が3党首を圧倒した。
国民に消費税増税を迫る以上、国会議員も身を削らなければならない。そのために歳費2割の削減、衆議院比例定数の40人削減、これを今国会、もしくは次期通常国会で必ずやりきる、これを約束するなら解散時期を明言する──と安倍自民党総裁に迫った。気迫に満ちたものだった。解散問題で野田首相が攻勢に転じた瞬間だった。
気圧された安倍総裁は、「民主党というのは、改めて思いつきのポピュリスト政党だなと思いました」と頓珍漢な回答とか、「私の質問に答えていない」とか、「選挙の土俵を自民党と民主党だけで決めていいのか」とか、ほとんどまともな回答をできなかった。