MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

 みなさん、老化の原因をご存知ですか? 私たちの研究室では、『高リン酸が老化を促進すること』を報告し(参考文献1、2)、ハーバード大学の学内誌で紹介され、アメリカのメディアでも話題になりました。

 今回は、リンと老化の関係をお話したいと思います。リンは砂糖や食塩と違い、味がありませんから、1日どれだけ摂取しているか気づいている方は少ないと思います。実は現代人の私たち、無意識にリンを過剰摂取しているのですよ。

 カルシウムが体に大切って聞いたことありますよね。それでは、リンはいかがですか?

 リンは、カルシウムの次に体内に多く存在するミネラルで、私たちの生体内で重要な役割を果たしています。

 リンは、約80%がカルシウムと結合し、骨や歯の成分となっています。残りは、細胞膜やDNAやRNAといった核酸の構成成分となり、すべでの細胞に存在します。

 また、エネルギー源となるATPの成分でもあり、エネルギー伝達に必要で、さらに糖や脂質代謝にも極めて重要な役割を担っています。

 従って、リン不足は、骨軟化症、歯周病や筋肉低下などを引き起こします。実際、リンは多くの食品に含まれているので、不足することはまれであり、むしろ過剰摂取が問題となってきています。

 それでは、どんな食品にリンは含まれているのでしょうか。私たちは、2種類のリンを食品から摂取しています。1つ目は、植物性、動物性タンパク質と結合している有機リンです。

 2つ目は、食品添加物として加工食品、ファストフード、インスタント食品、調味料、清涼飲料水やお菓子などに含まれている、タンパク質と結合していない無機リン酸です。

 具体的には、ハムやソーセージなどの食肉製品には、保存性、色や風味をよくするための結着剤として、ラーメン、インスタント麺などにはかんすいとして、コシや色調をよくするためにリン酸塩が混ざっています。

 また、瓶詰、缶詰には防腐剤としてリン酸塩が添加され、清涼飲料水には、酸味料としてリン酸塩を用いることが多いです。