いつからか週末は新聞折込と携帯メールを必ずチェックする習慣ができてしまった。ユニクロが今週は何を週末限定の割引商品に設定しているのか。マクドナルドから送られてくる携帯クーポンには何が入っているのか・・・。

 最近は、大手スーパーまでもが「入場制限をするかもしれません」という激安を知らせるチラシを配っている。「これって、本当かよ」と思わず叫びそうになる。東南アジアや中国の露店に下げられた値札かと見紛うような、Tシャツが1枚200~300円などの大見出しが並んでいるのだ。いい歳のオヤジが何してるかと反省しつつ、つい念入りにチェックしてしまう。

高くてもこだわり商品を買いたい人が全体の77%も

義志の緒方義志氏/前田せいめい撮影義志の緒方義志社長(撮影:前田せいめい、以下同)

 総務省が6月26日に発表した5月の消費者物価指数(CPIコア)は前年同月比で1.1%のマイナスを記録した。4月のマイナス0.1%から大きく悪化、過去最大のマイナス幅だという。日本はまたもや大きなデフレの溝に沈んでしまったようだ。

 ところが、である。日本全国がほぼ一色デフレ現象かと言えばそうでもない。「やんちゃ買い」なる言葉をご存じだろうか。人気テレビプロデューサー、おちまさと氏が仕掛け人の「男のやんちゃ買い」推進委員会が旗を振っている企画だ。

 例えば、ソニーの音を360度に広げるスピーカー「Sountina」や富士重工業が今年全面改良したスポーツワゴン「アウトバック」などが委員会の推奨商品としてピックアップされている。

 企画の趣旨は簡単に言えば、抑える部分は安い物で節約しつつも、本当に欲しい物は、気に入ったこだわり商品を買おうよ、というもの。

 この推進委員会が男女800人に調査した結果では、欲しい物が買えていないと答えた人が実に全体の8割以上もいたという。また、欲しい物の条件として挙がったのは、品質の高さとデザインの良さ。ブランドにはあまりこだわらないという結果だった。特に男性では、これはというデザインと品質なら、高くても買いたいと答えた人が77%に達したという。

 ちょっと出来過ぎの結果ではないか。これなら日本にデフレの心配など全くなさそうだ。この調査は、初めに企画ありきかと眉をひそめた。しかし、少し思いを巡らせてみると意外に事例が思いついた。それもけっこう豊富にありそうだ。

 一例をご紹介しよう。おちまさと氏が仕掛けている「男のやんちゃ買い」推進委員会とは全く関係がない事例である。でも、男のやんちゃ心をくすぐる、こだわり商品だけのラインアップで人気急上昇中の企業・ブランドなのである。

徹底的に日本にこだわったデザイン

 企業の名は義志。「よしゆき」と読む。東京の渋谷区神宮前に本社があるカジュアル衣料品の企画・販売会社だ。社長は緒方義志氏、37歳。本社や販売店がある東京・原宿界隈を自転車に乗って飛び回る。体中からエネルギーを放出している若き社長だ。

 原宿にある店舗に一歩足を踏み入れると、すぐさま強烈な個性が襲ってくる。

 この店で販売しているスニーカーは、すべてに足の親指と人差し指の間に大きなスリットが入っていて、“普通” との違いを明確に主張している。陳列してあるパンツは太ももから膝にかけての部分が大きく横に広がった形で、米国のジーンズや欧州を代表するイタリア、フランスのデザインとはかけ離れている。