知ってますか?すき家仙人の伝説を。
悩めるすき家ファンの前に現われ、
道を示してくれる
それはありがたい仙人様なのです
悩める者よ、すき家ののれんをくぐれ!注1
丼の底に光明を見よ!注2
注1.実際にはすき家にのれんはありません 注2.できるだけ残さず食べましょう
昼下がりのすき家。テーブル席に座ったカップルは、ちょっとお疲れのご様子。
「またすき家ぁ? そりゃあわたし、嫌いじゃないけど……」
「なんだよ。飾らなくておいしいすき家が俺らしいとかいってたくせに」
「いつの昔の話してんのよ」
「いいからメニュー貸せよ」
ボワン! 開いたメニューから突然白い煙が!
「何っ」「な、なんだ?」
「すき家仙人じゃ!」
「うわわっ! 何ですかアナタは?」
「おぬしたち、今、牛丼もおいしいけど飽きてきたな、と思ったじゃろう! それどころかおぬしら、つきあってそろそろ10年、このままずるずるしてていいのかな、結婚するなり別れるなりしないとお互いいい歳だし次の相手探すのもおっくうになるばかりだし、はっきりして欲しいな/させないとなとか思っておるじゃろう!」
「な、なぜそれを……」
「喝ッ! ワシには何でもお見通しじゃっ! いいか、ワシには見えるぞ。おぬしらの心の中は、倦怠の原因を相手に求めてばかりじゃっ! 甲斐性がないだの俺の話をいつも聞いてないだの自分の都合ばかりを押しつけるだの時にはこっちの趣味にもつきあってくれよだの」
「君、そんなこと思ってたの?」
「あなたこそ!」
「喝ッ! おぬしらは輝いておらん! 忘れたか! 初めて牛丼を食べた日を! 相手に初めて会った日を! 相手の喜びが自分の喜びだった日を! スキゾー、スキゾーはおらんか! あれを持て!」
「は、師匠、ここに」
「これは……? ただのすき家のメニューじゃないですか」
「バカもの! 答えはすべてはここにあるのじゃっ! おぬしらに足りないのは、ずばり、トッピングじゃっ!」
「トッピング!?」
「さよう! 飽きた飽きたと嘆くより、進んでひと味加えましょう。トッピングこそは心のともしびなのじゃっ!
たとえば! おぬしは、ねぎ玉牛丼が好きじゃな」
「はあ。青ねぎのシャキシャキ感と、甘辛い牛丼の肉が抜群の相性なんですよね」
「おぬしは3種のチーズ牛丼じゃな」
「わたし? ええ、とろりとしたチーズと和風のつゆのハーモニーが大好きで」
「ならば! これと! これならどうじゃっ!」」
「3種のチーズ牛丼に青ねぎをトッピング!?」
「食べてみい!」
「これは!? チーズの芳醇な香りに、ねぎの刺激的な香りが合わさって、いっそう食欲をそそるぞ」
「おいしい! チーズと醤油ベースの牛丼つゆっていう意外だけど絶妙な取り合わせはいつもだけど、そこに青ねぎの清冽さが加わると、味がぴしりと引き締まる感じ」
「とろりと溶けたチーズのコク、シャキシャキで野性味あふれるねぎ、そして牛肉。ねぎ玉牛丼のおいしさに通じてるけど、これはまた新鮮だ!」
「ふたりの好みがひとつになって、しかもおいしさがもっと大きくなってる!」
「君が3種のチーズ牛丼好きなのは、この食感があったからなんだね! 今まで気づかなかった」
「わたしも、ねぎは苦手だと思ってたけど、こんなに味を引き立ててくれるなんて」
「じゃろう! トッピングとはただ牛丼にひと味加えるだけのものではない! 新たな味、そして無限の可能性を引き出すひとつのきっかけなのじゃっ!」
「仙人! そうだったんですね、僕と彼女の関係も……」
「互いの心に向き合い、相手の喜びを引き出すひと味を探し続けるのじゃっ。さすれば、常に新しいふたりでいられるじゃろうて。このすき家の牛丼のようにな。さ、ゆくぞスキゾー。全国1700店余、すき家にはまだまだ迷える者たちがおるはずじゃっ」
「はっ、師匠!」
「ありがとう! すき家仙人!」