「おっ、すき家があったか！」
さっと入ってすぐ食べられる、しかもリーズナブルな牛丼は、昼食に悩んだビジネスパーソンにとってまずハズさない鉄板メニュー。
しかし、困ったときの牛丼頼みというだけではもったいない。
すき家の牛丼ならレギュラーだけでなんと8種類、プラス期間限定メニューで10種類近くになることも珍しくない。豊富なトッピングやサイドメニューで、さらに自分好みにアレンジすることも簡単だ。しかも、業界最大手のすき家は牛丼チェーン第1位となる全国1,482店舗を構え（2010年8月現在）、ちょっとした街ならすぐに見つけられるだろう。
これはもう、「悩んだら牛丼」ではなく、「迷わずすき家」ではないだろうか？
そこで、食いしん坊を自認するトレンド情報系の記者Ｓが、牛丼の魅力を極めようと1日1食すき家の牛丼、《すき家で一週間》を実践してみた。

週明けはメール処理だの原稿や書類の整理だのでなにかと慌ただしい。かなり押して昼休みに突入するも、午後の取材まであと1時間弱。昼飯食べるヒマあるかな？
とにかく電車で移動して、現地近くであたりを見回す。と、目に飛び込んだのは赤いどんぶりマーク。おっ、すき家があったか！
注文は僕の中でのナンバーワン、ねぎ玉牛丼。出てくるまでにスケジュールを確認しようとスマートフォンを取り出すが、その間もなく「お待たせいたしました」の声。これこれ、食欲と直結したようなこのスピードがいいところだ。
さてねぎ玉。気前のいい山盛りの青ねぎがたまらない。甘辛いツユと鮮烈なねぎの香りを玉子のまろやかさで包み、アクセントとなるピリ辛コチュジャンが見事なハーモニーを奏でる。何度食べてもうまい。
食後の冷水を飲みつつ、記者の習性で人間観察。それにしてもにぎわってるなあ。今や牛丼といえばすき家っていう時代なのかな。そのとき気が付いた。同じ牛丼のはずなのに、お客さんそれぞれの前に置かれた丼の中身が違いすぎる。え？　と思って改めてメニューを眺めると、牛丼のバリエーションこんなにあったっけ、というほどずらりと並んでいる。期間限定含めてその数ざっと10種類！なるほど、これだけ味の種類が豊富なら、何度も来るうちに食べ飽きるということもなさそう。カミングアウトすると、すき家に来るとつい定番の牛丼とねぎ玉牛丼ばかりを頼んでいた。
よし。食欲と好奇心が頭をもたげた。今週は1日1回すき家で牛丼を食べてみよう。仕事柄オフィスの外を飛び回ることが多いのだが、すき家ならたいていの場所にある。《すき家で一週間》だ！

改めてすき家について調べてみると、公認ツイッターアカウント「すき家たん http://twitter.com/gyudon_sukiya 」が人気らしい。
フォロワー数1万4000人以上というのだからすごい。すき家クルー卒業生がツイートしているらしく、企業公認らしからぬユル～い感じのコミュニケーションが楽しくてついついのぞいてしまう。そんな過去のツイートの中に、期間限定のセロリ牛丼の話を見つけた。牛丼と……セロリ？
正直、セロリはそれほど好きな野菜ではなかったのだが、ひとくち食べて驚いた。塩漬けにして、ゴマ油を効かせたナムル風なのがいいのだろうか、苦手にしていたクセが全然気にならない。かといってセロリらしさが無くなっているのではなく、シャキシャキした歯ごたえと、みずみずしい爽やかさはそのままだ。肉と一緒に食べても、箸休め的につまんでもいける。味に変化をつけられるので、どんぶり一杯があっという間だ。ビールにも合いそう。ミスマッチと思っていたのが申し訳ない。意外なところにコラボのヒントがあるもんだなあ。まさかすき家で勉強させられるとは思わなかった。

今日は打ち合わせの後の遅い昼食。週前半に突っ走り過ぎてちょっと疲れ気味なので、ミニサイズの牛丼に、暑い季節にもぴったりのおろしポン酢をトッピングしてさっぱりと。大盛り、特盛りはどの店も当たり前だけど、すき家はミニからメガまで6段階。もちろんどの牛丼メニューでもＯＫで、体調や食欲に合わせて選べるのだ。豊富なトッピングで、自分だけのスペシャル牛丼をアレンジできるから飽きさせない。食べ出したら食欲が戻ってきたのか、結局とん汁とサラダも追加する。サイドメニューで栄養バランスを調整できるのもありがたい。
ふと周りを見回すと、そういえば女性だけで食べに来ているグループも目立つ。食後にソフトクリームやフロートで楽しんでいる人もいるようだ。そんなメニューがあることすら知らなかった。自分の学生時代とは違うこのカジュアルさも、それだけ牛丼が身近になったということなのだろう。

肉が食べたい。がっつり肉が食べたい。昨日の食欲の無さはどこへやら、明日までに仕上げなくちゃいけない3本の締め切りを前に、体がパワー補給を要求しているようだ。
午前の取材を終えて目についたすき家に飛び込むと、肉1.5盛というぴったりのメニューがあるじゃないか。今日はこれで決まりだ。「牛丼、肉1.5盛ね」とオーダーするとき、ちょっと誇らしげになっているのはなぜ？　でもつい顔がほころんでしまうよね。食べても食べてもなかなか減らない肉の量に大満足。実は並と肉1.5盛で、カロリーはたったの8kcalしか違わないって知ってた？　牛丼の肉って案外ヘルシーなんだな。ハンパない満腹感でそれっぽっちの差なら、ここぞというとき頼まなくちゃ損というもの。元気をもらった一食だった。

週末を前に忙しい一日。食事に出るヒマもなく、今日はバイト君に頼んでわさび山かけ牛丼をテイクアウトしてきてもらった。お茶を注いで一息ついていると、僕の《すき家で一週間》チャレンジを知った友人からこんな情報が。「牛丼をお茶漬けにするとめちゃくちゃうまい！ってよ」と。
目の前にはわさび山かけ牛丼、そしてお茶。これは、運命か？　心を落ち着かせて、まずはそのまま味わう。とろろののどごしが汁の染みたごはんによく合う。うまい。つるつる一気に食べたいところを我慢して、さて。
ええい、なにごとも挑戦とお茶を一気にどんぶりへ。しょう油で軽く味を調えてから、ひとくちすする。なんと！
めちゃくちゃイケる！　牛丼のツユにお茶の苦みと香ばしさが加わって、より複雑で奥行きのある汁となり、肉もさっぱりと食べられる。わさびのツンと鼻に抜ける清涼感が食欲をまた刺激する。これは新たなおいしさだ。だまされたと思って一度試してほしい。会社のデスクでひとり盛り上がる僕だった。

「今週のお昼はずっとすき家だったよ」と家族に話すと、子供たちが「パパだけずるい！」と大合唱。よし、それなら土日もすき家で本当に《すき家で一週間》だ。娘は間髪入れずに「すきすきセットがいい！」と宣言。すきすきセットってなんだ？
聞いてみると、通常メニューに150円をプラスするだけで、ドリンクとコーンにキャラクターグッズなどのおもちゃが付いてくるというお得なセットなのだそうだ。なるほど、それならおねだりされても困らない。

僕はキムチ牛丼、妻はＣＭを見てから食べてみたかったという3種のチーズ牛丼、長男は高菜明太マヨ牛丼、そして娘は牛丼ライトをすきすきセットで。うまいこと、平日とかぶらないメニューに誘導できた。当然、みんなで食べ比べ。これもテーブル席のあるすき家ならではの楽しみ方だ。

キムチ牛丼はやはり抜群の取り合わせ。キムチの酸味と辛味が牛肉にからんで、ごはんが進むこと進むこと。みんなで取り合って僕の食べる分がなくなるほどだ。3種のチーズ牛丼はミックスチーズにゴルゴンゾーラのパウダーがかかった、たっぷりのチーズが決め手。しばらく待って、アツアツの牛丼でチーズがトロトロになったところを食べるのがベスト。つゆだくでリゾット風に食べるのもおすすめだ。高菜明太マヨ牛丼はいかにも食べ盛りの息子が選んだメニュー。脂と相性のいい高菜にピリ辛の明太マヨ。牛丼＋マヨの破壊力はやみつきになりそう。思わぬ収穫はご飯の代わりに豆腐を使った牛丼ライト。牛丼の具と野菜をあったかい豆腐に乗せて、なんと並牛丼の半分以下となる280kcal。ダイエットしたい、でも牛丼も食べたいという贅沢な悩みに応えるメニューなのだ。土曜にして、ついに全牛丼を制覇！　しかもお会計は家族4人で1,600円。家族も僕も、お財布も大満足の昼食となった。