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文科省が言っているプログラミング教育は「プログラミング的思考」の学習

 2020年、いよいよ日本でも小学校からのプログラミング学習が必修化します。しかしインド、イギリス、フィンランド、電子政府で有名なエストニア(選挙から引っ越しの手続きまで全てネットで申請できる)など初等教育からプログラミング学習を必修化している国は少なくなく、日本はやや出遅れた感があります。

 教育現場でのICT活用の遅れはプログラミング教育だけでなく、OECDの発表では「家庭学習でのパソコン利用率」では日本はぶっちぎりの最下位です。※2012年に65か国・地域(OECD加盟34か国、非加盟31か国・地域)、約51万人の生徒(15歳児)を対象に調査

教育のICT活用は急務と言えますが、「プログラミング教育」について2016年6月16日の文部科学省の有識者会議では、

  • (小)身近な生活でコンピュータが活用されていることや、問題の解決には必要な手順があることに気付くこと。
  • (中)社会におけるコンピュータの役割や影響を理解するとともに、簡単なプログラムを作成できるようにすること。
  • (高)コンピュータの働きを科学的に理解するとともに、実際の問題解決にコンピュータを活用できるようにすること。

と記載されるに留まっています。

「どの学年でどのような教育」を行うのかまだ明るみになっておらず、教育現場でも準備が整っていないという危機的状況と言えるでしょう。

 また同じ有識者会議において「プログラミング教育とは、子どもたちに、コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての『プログラミング的思考』などを育むこと」とも述べられています。

 ここで注視するべきは「プログラミング的思考」という部分でしょう。一般的に「プログラミング教育」と言えば、コードを書いたり、プログラミング言語を学んだりすることが想起されます。しかし文部科学省は、プログラミング言語の指導に自信がない教員に配慮したのか、「言語ではなく論理的思考」を「プログラミング教育」の中心に据えており、実際にコードを書くなどの学習機会がない可能性すらあると言えます。

 確かに教員アンケートにおいて「児童生徒のICT活用を指導する能力」は65.2%(2015年)に留まっており、教員試験を受けたときにはなかったプログラミングを指導せよ、といきなり言われても現場は困ってしまうのが実情でしょう。

教員のICT活用指導力の推移出所:文部科学省「学校におけるICT環境整備に関連する資料(2015年)」

家庭でもできるプログラミング教育

 日本において今後プログラマー不足は懸念されており、2017年5月30日閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」第2部人材育成においても「子供たちの論理的思考力や創造性等を高める観点から、クラウドや地域人材を活用した、プログラミング教育の実施モデルを開発・普及し、将来の我が国の社会経済を支える人材を育成」と記載されています。

 また何もプログラムを専業としないまでも、ある程度プログラミングができる人材はどの分野でも重宝される時代になるでしょう。

 子どもたちが将来的に会社の企画部に所属することになったとして、収集した現場の情報を論理的に整理した上で、商品企画や販売戦略などへのアイデアに活かし、周囲に対してより分かりやすく視覚的に訴求することが可能となり、企画力がある人材と認められる機会が増えると予想されます。

プログラミン文部科学省提供

 IoT時代に突入し、今後は身の回りのものがどんどんインターネットと接続していきます。どのような産業で働いたとしても、プログラミングができるようになっておいて損はありません。

 しかしながら学校の現状を考えると、指導者不足、整備不足の感が否めず2020年を待たずして、ご家庭でプログラミングを学ぶ方法はいくつもあります。例えばプログラムコードを視覚化したブロックを組み合わせることで簡単にプログラミングができる「プログラミン(文部科学省提供)」や、ゲームのような仮想空間のなかでプログラミングを学ぶことができる「マインクラフト Hour of Code(Code.org提供)」などで学ぶことが可能です。

マインクラフト Hour of CodeCode.org提供

タブレットPC?それともキーボード付きパソコン?

 文部科学省によると教育用コンピュータの整備率は日本において6.2人に1台の割合です。アメリカではその倍の3.1人に1台の割合を今から8年も前に達成しており、ここでも世界に遅れをとっています。また普通教室の無線LAN整備率は全国平均26.1%であり、整備が急がれます。

教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数出所:文部科学省「学校におけるICT環境整備に関連する資料(2017年)」

 プログラミングに子どもが興味をもって、いざ開始しようというときに学校のパソコンを使える状況ではありません。そこでご家庭でパソコンを早いうちから準備しておくことが必要です。タブレットPCでもプログラミングを学ぶことはできますが、より実践的な学習に進むためにはやはりキーボードが付いているパソコンが望ましいでしょう。

 上述の簡易なブロックプログラミングだけでなく本格的にプログラミングを学びたくなったときやコーディングをしたくなったときに、タブレットPCでは物足りなくなります。やはりタブレットPCは「情報を閲覧する(消費する)」ことには長けていますが、「情報をつくりだす(提供する)」ことはキーボード付きパソコンに勝るものはありません。最近はキーボード付きでも軽量化が進んでおり安価なものもあります。お子様を有害サイトから守るセキュリティもしっかり設定ができるので安心です。

 子どもが未来を担う人材になるためにも、学校が整備されるかどうかに左右されることなくご家庭で環境を整えていくことをおすすめします。

大辻雄介 NPO法人SOMA副代表理事(https://nposoma.org/
島前教育魅力化プロジェクト教育ICTディレクター