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欧州と中国:ドラゴンの悪夢
対中政策で足並みを揃えられないEU諸国

2009年04月23日(Thu) The Economist

(英エコノミスト誌 2009年4月18日号)

欧州連合(EU)は中国にどう対応するかについて合意できずにいる。

 ブリュッセルでのディナーパーティーを台無しにする手っ取り早い方法がある。世界の統治は、欧州諸国が最大で議席の半分を占領するG20、G7、G8その他の協議機関の枠組みをすり抜けつつあると進言するだけでいい。

 そして、重苦しい調子で、未来はG2――中国と米国によって構成される架空の機関を指す新たな流行語――の手の内にあると言うのである。

 欧州の将来の権力に関する公の場での得意気な言動とは裏腹に、欧州諸国は、蚊帳の外に置かれる恐怖に苛まれている。とりわけ、中国が欧州連合(EU)に興味がないかもしれないという考えは大きな痛みをもたらす。

中仏両首脳、欧州の対中武器禁輸措置撤廃を再度希望 - 中国

フランスのジャック・シラク前大統領(左)は中国の台頭を歓迎していた〔AFPBB News

 何しろ、21世紀は本来、もっと違ったものになるはずだった。実際、フランスのジャック・シラクのようなかつての指導者たちにとっては、台頭する中国は米国の覇権に挑戦するもう1つの勢力として歓迎された。

 それが、EUが大きな役割を担う「多極化した世界」をもたらしてくれると考えられていたのである。

 もしそれが、中国の要求の前にぬかずいて、台湾を避け、ダライ・ラマを冷遇し、人権の不正使用に対する非難を抑えることを意味するのなら、それはそれで仕方がなかった。

 大半のEU諸国は中国との商業外交を重視し、自国の指導者の訪中が必ずカメラのフラッシュを浴び、うまみのある契約を結ぶ形で終わるように務めた。

 一方、欧州の対中貿易赤字は昨年、1700億ユーロ(2500億ドル)近くまで膨らんだ。EUのシンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)が最近まとめた欧中関係に関する痛烈な監査報告書は、中国は欧州企業に対して無数の障壁を築いている、と指摘している。

 この傾向は不吉である。中国は、5年後には中国製の新車の部品の60%を国内生産したいと考えている。これは、自動車部品、工作機械、その他製品のおかげで欧州最大の対中輸出国となっているドイツにとって警戒すべきニュースだ。

 例によって例の如く、欧州諸国はどう対応するかについて意見が割れている。

 一部の国は、中国に政治的に挑戦することに前向きだ。例えば、ドイツ、英国、スウェーデン、オランダなどである。だが、これらの国々は概ね、自由貿易主義者であるため、中国の不正行為疑惑に対して他国が保護主義を求めた場合には、敵対的な立場に立つことになる。

 対照的に、ECFRが「協調的重商主義者」と呼ぶ、大部分が南欧および中欧諸国からなる集団は、すぐに反ダンピング措置を求める。しかし、これらの国々は、政治的な問題で中国に服従することで、より広範な友好関係を保とうとするのだ。

 その結果、欧州の政治家たちは往々にして、いつの間にか中国との無条件の関係を擁護することになる。

 よく耳にする主張は、無条件の関係を築くことで、中国を徐々に、世界の中でより自由で責任あるステークホルダー(利害関係者)に変貌させていく、というものだ。その秘訣は、欧州が中国を協定やセクター別対話の込み入った網の中に組み込むことだと囁かれている。

 2007年には、450以上の欧州の代表団が中国を訪れた。フランスや英国などの大国は、EUが自分たちの利益を守ってくれる、あるいは、きちんと仕事をしてくれるとは考えず、自ら、中国との2国間対話を行っている。例えば気候変動に関しては、現在、EUおよび欧州各国と中国との「対話」が6つも同時進行している。

 悲しいかな、欧州諸国と慣れ親しむことは、軽蔑的な態度を排除するものではない。人権や法治に関する欧中対話は、具体的に中身に立ち入るのを避けながら、欧州諸国をプロセスにつなぎ留めておく方法である。

サルコジ仏大統領、ダライ・ラマと会談 中国は猛反発

ニコラ・サルコジ仏大統領がダライ・ラマと会談したことに、中国は猛反発した〔AFPBB News

 中国は、昨年12月に予定されていた欧中サミットを突然中止した。このような驚くほどの軽視は、中国外交筋が、フランスがEUの輪番議長国を務めた時にニコラ・サルコジ大統領がダライ・ラマと会談したことに対する見せしめとして示した態度だ(ほかのEU諸国は、これに留意するばかりだった)。

 EUに対する中国の関心は、EUが近い将来、憲法、外務大臣、フルタイムの大統領を設置すると思われた2003年にピークを迎えた。

 だが、蜜月時代は2006年には終わっていた。中国が、1989年の天安門事件の後に課された武器禁輸をEUに解禁させるのに失敗した後のことである。

 政策専門家会議や非公開会議では、国の後押しを受けた中国人アナリストらが今、見下した態度を取っている。米国は強い男で、中国は育ち盛りの10代の若者だ、とストックホルムで行われた2008年の会議である人は言った。そして、欧州は、もうろくに向かっている「金持ちの老人」だ、と。

 英国で最近開かれたウィルトンパーク会議では、ある中国人研究者がEUのことを、米国の覇権に挑戦する準備の整っていない「弱い勢力」と呼んだ。中国は、新たな世界秩序に関してEUと連携する気は全くないという。

統一と不統一との出合い

 もし欧州の弱点をまざまざと浮き彫りにする競争相手を作り出したかったら、思いつくのは、中国とよく似た国だろう。中国は、しばしばほかの誰よりも中国人にとって重要な意味を持つ国家目標を辛抱強くまた容赦なく追求する、中央集権化された統一国家だ。

 これに対して欧州諸国は、中国に何を望んでいるのかについてさえ足並みが揃っていない。欧州諸国はEUの「価値」に曖昧にしかコミットしておらず、先を争って自国の有権者のために雇用や安価な品物を確保しようとする時には、これらの価値を簡単に踏みにじる。

 欧州諸国は、貿易政策についても、気候変動に関してどのように中国に迫るのが最善かについても、同じ構想を共有していない。さらに悪いことに、最大の国、特にフランス、ドイツ、英国が、中国のお気に入りの欧州パートナーになることを競っている。

 それが被害をもたらす。サルコジ大統領がダライ・ラマの件で中国に脅されている時に、英国やドイツがサルコジ大統領を即座に擁護しなかったのは全く愚かしいことだった。これらの国々は、EUの指導者は誰でも会いたい人に会えるのだと簡単に主張できたはずである。

 それでも、「チャイメリカ(Chimerica)」のG2が世界を動かすと言うのは言い過ぎだ。

 1つには、恐らく中国は、自分自身のグローバルな選択肢を残しておきたいと思うだろう。もう1つには、ブリュッセルの高官らがいみじくも主張するように、グローバルな経済協議でEUの声が無視されることはあり得ない。結局のところEUは、双方向貿易が3000億ユーロという巨額に上る、中国最大の貿易相手なのだ。

 理想的には、欧州諸国がもう少し力をつけ、もう少し統制の利いた集団になればいい。それが駄目なら、欧州はもう少し控えめな目標を設定することもできる。

 中国の高官らは、欧州の福祉や公的医療制度、EUの製品規制に非常に強い関心を持っていると言われている。

 非効率なお役所仕事や福祉制度の改革のモデルを提供することは、多極化した世界を一緒に運営することほど面白くはないもしれない。

 しかし、中国のようなパートナーに対処する際のこれまでのお粗末な実績を考えると、欧州は、自らの存在価値を認めてもらえるのであれば、それがどんな形で提供されたものにせよ、歓迎すべきだろう。

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