我々の業界では、自社内でシステム開発要員が過不足になると、他のシステム開発会社と要員の貸し借りをする慣習があることを、以前お話ししたかと思う。

 銀行や証券会社のシステム構築において要員を貸し借りする場合は、「金融システムの開発経験があれば優遇」ということになる。

 私は、システム開発に一番大切なのは「メソドロジー(システム開発方法論)」であり、メソドロジーには業界の区別がないと考えてきた。

 だが、最近、この考えを否定されるような出来事が起こった。

「システム開発の『タイケン』談」に負けた

 当社の優良顧客の1社が、生産販売管理システムを再構築をするという。もちろん、我々は提案書を提出した。当社以外の2社にも提案書の提出を依頼しているという。

 我々にはその会社のシステムを構築しているという「自負」と「自信」があった。だが、その案件を失注してしまったのである。

 「過信」があったのは事実である。現在のシステムの受注時には、「8億円ある在庫を3割以上削減してほしい」という要望に応え、4億5000万円まで削減することができた。システムは3億5000万円のキャッシュフローを生み、非常に感謝された。

 システム開発時には、生産販売管理の方法を「品番管理」から「製造番号管理」に変更した。製造番号管理で行うと在庫が減ることを、我々が提案し、採択されたのだった。

 だが、今回のシステム再構築では、製造番号管理から品番管理へ再度戻すという。現場から「以前の品番管理に変更してほしい」との要望があって、会社が聞き入れたのだ。

 当社の提案はなぜ採択されなかったのか。理由を聞いてみると、「今回新しく発注することになったX社は生産販売管理に特化した会社で、200社以上の製造業への導入実績がある。システム開発の『タイケン』談にインパクトがあった」というのである。しかも、開発金額は当社の提案した金額の約半分だという。

 「経験」ではなく「タイケン(体験)」とは? 今までの私のシステム開発の概念にはなかった言葉である。私は失注したにもかかわらず、その体験とはどういうことかを何度も聞いたのである。

体験したあらゆるケースを基にシステムを設計

 要約すると次のようなことである。

 同じ製造業でも、「品番管理」と「製造番号管理」のどちらを採択するかは、会社によってバラバラだ。