10月20日、マツダが「次世代技術説明会」を開催し、その取材結果を反映したニュースが20日夕方頃から新聞、テレビなどにチラホラと現れた。

 けれども、いずれも「マツダがガソリンエンジンだけでハイブリッドと同等の燃費、リッター30キロメートルを達成したコンパクトカーを来春発売」というだけのものでしかなかった。

 残念ながら、新聞やテレビの多くの記者諸氏、アナリストの皆さんには、ほとんどがチンプンカンプンな話だったに違いない。本来なら、この説明会の翌日、マツダの株価が跳ね上がっても不思議ではないほどの重要な「鍵」がいくつも提示されていたのだが・・・。

 マツダの人々が何とか「分かりやすく」しようと苦労を重ねた2時間あまりの説明と、現物の展示を見聞きした中で、彼らが理解したのは「ハイブリッドじゃなくてもリッター30キロメートル」だけだった、ということだ。

電気自動車、ハイブリッドだけが「明日の技術」なのではない

 ここでも以前から何度か書いてきているように「電動化」だけが自動車とその社会の手にする、あるいは手にすべき「明日の技術」ではないし、それだけで日本の自動車産業が「世界に対するアドバンテージを保つことができる」わけでもない。

 逆に「エネルギーと動力源の多様化」に向かうこれからの時代、狭い一分野だけが「明日」だと思い込むことは、日本の自動車と産業が世界の潮流の一隅に押しやられる状況を生みかねない。技術立国・日本の明日をミスリードしないためにも、大新聞やテレビ、経済界の人々に幅広くその認識が浸透することが望まれるのだが、それはまだまだ難しいようである。

 しばらく前、NHKの夜のニュース番組で司会者が自動車メーカー首脳に向かって「今どき内燃機関ですかぁ。遅れてますねぇ」などと放言し、しかもその首脳(技術系ではない)も「そうですねぇ。まずはハイブリッドで」などと迎合し、ちゃんと説き聞かせることができないまま番組は進んでしまった。こうしたあれこれを見るにつけ、日本の危機はむしろ深まる一方なのかもしれない、と感じてしまうのである。

 少し専門的なところまで踏み込む話になるが、ここで一度、今回のマツダの「次世代技術説明会」の内容を紹介しておくことにしよう。

 その基本的な考え方は、実は2009年6月にマツダが「環境技術説明会」を行った時にすでに説明されている。この時も某経済紙が「マツダもハイブリッドへ」と、まったくトンチンカンな内容を1面に掲載して、マツダの人々も失笑するしかない、という事態が演じられた。それもあって今回、マツダのプレゼンテーターは「ハイブリッドでなくても・・・」と記事にしやすいフレーズを説明の中に入れ、記者の何人かが反応した、ということでもある。