ブラジルの国営石油会社ペトロブラスのガブリエリ最高経営責任者(CEO)は、2009年12月、「今がまさに石油供給のピークだ」という認識を示した。既存油田の減退分を補うだけでも、今後2年ごとに新たなサウジアラビアを発見し続けなくてはならず、これは実質的に不可能だとする見解である。

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ペトロブラスのガブリエリCEO〔AFPBB News

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原油価格が高騰しても石油供給は増えず、市場主義者の主張は裏付けられなかった〔AFPBB News

 もちろん反対意見もあるだろう。エコノミストなど市場原理を重視する人々は、「需給が逼迫して石油価格が上昇すれば、より多くの資金を採掘や新規油田の開発に回せるようになり、現在の石油価格では採算が取れない油田も稼働し始める。全ては市場が解決してくれる」と主張するはずだ。

 しかし、石油価格が異常に高騰した過去数年間を振り返ってみても、その主張は実証されてはいない。

 米国でエネルギー関連の投資銀行を経営し、ブッシュ政権でエネルギー政策のアドバイザーも務めたシモンズ氏の試算によると、原油生産の上流部門への年間平均支出は、2000~04年が1150億ドルであったのに対して、2004~08年は2850億ドルと、原油価格の高騰にシンクロして急増している。

 しかし、2004年以降の原油生産量は、日産7300万バレルの水準から伸びていない。2003~08年にかけて、世界は約1.5兆ドルをつぎ込んだが、既存油田の減耗分を埋め、現状を維持するのがやっとというのが実情だ。

 だからこそ、冒頭で紹介したガブリエリCEOのように、かつては楽観論だった石油産業のトップでさえも、最近では厳しい現実を率直に語るようになってきたのだ。

石油を代替できるエネルギーは存在しない

 そうなると、必然的に、石油以外のエネルギー源に注目が集まることになる。エネルギーについて考えるにあたっては、それが「1次エネルギー」か「2次エネルギー」か、「枯渇性資源」か「再生可能資源」か、によって4つのカテゴリーに分類することが可能だ。

 1次エネルギーとは、自然界に存在するままの形のエネルギー源を指す。これに対して2次エネルギーとは、電気や水素、都市ガスなど1次エネルギーを変換して得られるエネルギーだ。

 2次エネルギーは、「エネルギー」であっても「エネルギー源」ではない。1次エネルギーがなければ、2次エネルギーを生み出すことはできない。エネルギー問題とは、基本的に1次エネルギーの問題であり、両者を混同してはならない。

 1次エネルギーには、石油や石炭、天然ガス、ウランなどの枯渇性資源と、木材、地熱、太陽、水力、風力、波力、潮力など再生可能資源がある。2次エネルギーも、枯渇性資源由来のものと、再生可能資源由来のものとに分類できる。

 さらに、代替エネルギーを考えるにあたっては、押さえておくべきポイントが2つある。

 第1のポイントは、「枯渇性資源」の場合、必ず生産ピークが訪れるという点である。これは、枯渇性資源の宿命だ。地球は有限で、資源にも限りがある。