(英エコノミスト誌 2009年11月28日号)
心配するだけの十分な類似点がある。
先進国の政策立案者にとって、日本の窮状は悪夢の材料である。1990年代初めの不動産と銀行の崩壊がもたらしたダメージは何年も尾を引き、政府の財政に壊滅的な打撃を与え、最終的に経済全体をデフレに巻き込んだ。その影響は今なお日本に見て取れる。
このため、日本の経験を回避したいという思いが、金融危機に対する他国の対応を形作ったとしても驚くには当たらない。
1990年代の日本の経験を避けたくて危機対策を取ったが・・・

中央銀行が非伝統的な金融政策に手を出したスピードや規模から、銀行の問題を修復することへの集中的な取り組み(少なくとも言葉の上では)に至るまで、各国中央銀行の反応はどれを取っても、日本のバブル崩壊に対する初期の煮え切らない対応とは対照的である。
だが、果たしてそれで十分なのだろうか。
よく調べてみると、米国から英国に至るまで、日本との憂慮すべき類似点は残ったままだ。しかもいくつかの点では、バブル崩壊後の現在の政策課題は、日本の政策立案者がかつて直面したどんなものよりも複雑である。
マクロ経済的に見ると、主な類似点は、民間部門と政府部門の貯蓄に大きな変化が起きていることだ。日本の資産価格の崩壊は、企業のバランスシートに大きな穴を開けた。企業が債務の返済に何年も費やしたため、日本経済は政府借り入れの大幅かつ持続的な増加によって下支えされるしかなかった(図参照)。
平均すると、日本政府は1993年以降毎年、潜在GDP(国内総生産)の5%を超える構造的な財政赤字を計上してきた。
現在のバランスシート問題は、厳密には違った姿をしている。というのは、米国や英国、その他のバブル崩壊後の国では、家計部門が最も大きな埋めるべき穴を抱えている。
しかし今、民間部門の調整は、より一層痛みを伴うものになっている。民間部門の劇的な黒字転換が、(日本で見られたような)公的部門の借り入れの大幅な増加にそのまま映し出されている形だからだ。
そして、その状況はまだまだ終わらない。家計部門のバランスシートがワープのような速さで修復されたとしても、現在バブル崩壊後の状態にある国々は、まだ数年間は多額の財政赤字による支援を必要とするだろう。
バランスシート調整のスピードが速ければ速いほど、景気の落ち込みが大きくなるリスクも高まる。巨額の景気刺激策にもかかわらず、現在の景気後退は、日本のバブル崩壊の後遺症より深刻なものになっている。
欧米にも忍び寄るデフレの脅威
失業率や経済の落ち込みの程度は当時の日本より大きく、これが、中央銀行が金融の蛇口を開けっぱなしにしているにもかかわらず、デフレ圧力を高めている。経済協力開発機構(OECD)の最新の「経済見通し」は、米国の需給ギャップ――実際のGDPと潜在的なGDPとの差――をほぼ5%、英国の需給ギャップを6%強と推定しており、どちらも当時の日本より大きい。
広義の基準で見ると、米国の失業率は10%どころか18%に迫っている〔AFPBB News〕
また、10.2%という米国の失業率は、まず間違いなく労働力の余剰を過小評価している。不完全就業者を含めたより広義の基準で見ると、実際の失業率はほぼ18%に達している。
経済の縮小が止まったとしても、これだけ大きな余剰生産能力があっては、デフレのリスクが残る。消費者のインフレ予想は安定しているが、専門家は今、物価上昇のペースが鈍ると予想している。
フィラデルフィア連銀の調査によると、今後10年間のインフレ率に関する専門家の予測は、3カ月前の2.5%から現在は2.26%に低下している。
楽観主義者は、日本は多くの誤りを犯したと指摘する。特に、銀行システムをきれいにするのに要した時間などをその例として挙げる。しかし、日本が犯したミスのいくつかは、今も繰り返されている。
ストレステスト(健全性審査)や金融部門のリストラを巡る大騒ぎにもかかわらず、バブル崩壊後のほとんどの国が取っている本当の戦略は、銀行が中央銀行のタダのカネを使って多額の利益を上げられるようにして、徐々に窮状から脱するのを認めることだ。
銀行の帳簿にはまだ多くの不良資産が残っている。その結果、供給不足と需要不足のために信用が収縮し、銀行システムは機能不全に陥っている。米連邦預金保険公社(FDIC)の最新のデータでは、銀行の貸出残高が7月から9月にかけて2.8%減少したことが示されている。これは過去最大の落ち込みである。
現在は全体の7%に相当する552行がFDICの問題リストに名を連ねている。英国では、非金融企業に対する銀行貸し出しが10月にも引き続き減少した。
米国では、少なくとも大企業については、こうした信用収縮の影響が軽減されている。企業は債券市場を活用できるからだ。非金融企業による社債発行総額は10年間の平均を55%上回って推移している。
英国でも債券市場に頼る企業の数が増えているが、その能力は米国に比べると小さい。英国の民間債券市場の規模はGDPの16%相当と、米国の120%やG7平均の50%を大幅に下回っている。
経営が苦しい少数の銀行に依存する英国
米国などと比べて社債市場の規模が小さい英国は、銀行に頼るしかない(写真はロンドンの金融街)〔AFPBB News〕
イングランド銀行の金融政策委員会の外部委員を務めるアダム・ポーゼン氏が最近述べた通り、問題を抱えた少数の大手銀行に依存する英国の姿は、1990年代の日本と「居心地の悪い類似点」をはっきりと示している。
違いも沢山ある。日本のバブル崩壊はずっと大きかった(銀行が抱える不良債権の残高はGDP比35%に達しており、現在の最も悲観的な予測をはるかに上回っている)。日本のマクロ経済の調整は、人口減少によって難しいものになっていた。
だが日本には何年もの間、困難な状況に陥った唯一の大国という利点があった。当時と比べると今の方が、修復を要するバランスシートの数は多く、輸出主導型の成長の見込みは薄く、公的債務の増加はずっと大幅なものになる。今後、もっと多く眠れない夜が続きそうだ。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。

