紺色の山の端に日が落ちた。中心部の家や街灯に光が戻り始めていた。野田村を去る最後の夜だった。私は晴山さんの事務所を訪ねた。お別れの挨拶とお礼を言いたかったのだ。玄関先で失礼するつもりだった。「まあ、30分くらい上がっていきなさいよ」