T・スウィフトさん、民主党支持を表明 トランプ氏「25%くらい好きじゃなくなった」

米ビルボード・ミュージック・アワードに登場した、シンガー・ソングライターのテイラー・スウィフトさん(2018年5月20日撮影、資料写真)。(c)LISA O'CONNOR / AFP〔AFPBB News

 著名人の影響力は決して過小評価できない――。

 米中間選挙(11月6日)を前に、人気歌手テイラー・スウィフトさん(28)がインスタグラムで初めて政治的発言を行い、大きな波紋が広がっている。

 カントリーポップ歌手の発言によって「中間選挙の結果が左右される」かもしれないのだ。

フォロワー数は1億1200万人

 スウィフトさんの10月7日の発言以来、13日までに新たに選挙登録をした有権者は、非営利団体「ボート・オルグ」のよると40万人以上に達している。そのうち約25万人は30歳以下の若者だ。

 何しろ彼女のインスタグラムのフォロワーは1億1200万人もいる。米国人だけでないことを考慮しても膨大な数である。

 発言以来、登録者は連日増えている。州にとってはすでに登録が締め切られたところもあるが、まだ伸びている。

 スウィフトさんに誘発された若い登録者の多くは民主党であることから、反トランプ派の動きが加速され、中間選挙はこれまで以上に民主党有利になる可能性がある。

 何しろバラク・オバマ前大統領が2008年に当選した時、テレビの人気司会者オプラ・ウィンフリー氏がオバマ氏を推薦したことで万単位の票が加算された経緯がある。

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 シカゴ大学で経済学の教鞭をとるスティーブン・レビット教授は10年、ニューヨーク・タイムズ紙で「100万票以上が動いた」と述べている。

 スウィフトさんの影響力は今年、ウィンフリーと同様と考えて差し支えないだろう。

 というのも40万という数字は新しく登録をした有権者であり、すでに登録を済ませた人は数字に入っていない。総合的に判断すると100万票では効かないかもしれない。

実名を挙げて大統領を批判していないものの・・・

 インスタグラムでは次のように訴えている。

 「これまで私は政治的な発言は控えてきました。しかし過去2年、私の周りと世界で起きた出来事を眺めると、このままでいけないと感じるようになりました」

 「(中略)私はLGBTQの権利を守るべきだと信じています。米国には恐ろしい、気分が悪くなるような、組織的な人種差別がはびこっています」

 一部抜粋だが、全文を読んでもドナルド・トランプ大統領という名前は出てこない。

 だが文章からはトランプ氏に物を申すという意思が滲み出ている。そしてスウィフトさんが住むテネシー州の民主党候補の名前2人を挙げて、彼らに票を入れると明言した。

 これまでも米国では、歌手や俳優が政治的な立場を鮮明に打ち出すことは珍しくはなかった。

 同じ民主党支持者ではマドンナやレディー・ガガ、マット・デイモン、ジョニー・デップなど、トランプ批判を恐れずに口にしてきた人は多い。

 ジョージ・クルーニーなどは2016年、英ガーディアン紙とのインタビューでトランプ氏を「外国嫌いのファシスト」と侮辱したほどだ。

自分のファンに平手打ちの危険性

 それでもスウィフトさんにとって、今回のトランプ批判はリスクを伴ったはずだ。というのも、地元テネシー州は共和党の岩盤支持層が住む選挙区で、カントリー歌手のファン層と被る。

 同州現職の上院議員2人、下院議員5人のうち4人は共和党で、民主党支持を表明することは、自分のファンの何割かに平手打ちを食らわせることにもなる。

 だが、スウィフトさんはトランプ政権と距離を置くことにした。

 これまで彼女は「政治的な見解を述べることは私のすることではありません。音楽こそが私の仕事ですから」と、政治的質問を受けるたびに答えてきた。

 ミュージシャンとしては正しい選択だったとも言える。

 2年前の大統領選でも、スウィフトさんは「テイラーの大きな沈黙」と言われたほど何も語らなかった。

 トランプ氏にもヒラリー・クリントン氏にも寄りそらなかったのだ。トランプ氏についてコメントを求められても、「投票に行ってください」と述べるに留めていた。

 米リプリーズ・レコードのホーウィ・クレイン元社長は、今回のスウィフトさんの反共和党発言について米誌で述べている。

日本で言えば安室奈美恵

 「歌手を応援する大勢のファンがいる場合、様々な利害を考えると政治的立場は表明しない方が得策です」

 「しかしスウィフトの場合、彼女のすべての言動を支持する『スウィフト界』と呼べるほどのファンがいるので、安全だと判断したのでしょう」

 日本で言えば、過日引退した安室奈美恵さんのファン層が「スウィフト界」に相当するかもしれない。

 安室さんの熱狂的なファンであるタレントのイモトアヤコ氏などは、安室さんが政治発言をした場合には追随する可能性がある。

 今回、スウィフトさんが政治的沈黙を守れなくなったのは、周囲が盛んに憶測を語り始めたこともある。

 友人で女優のレナ・ダナムさんがネットサイト『ポリティコ』に語っている。

 「以前から、『テイラーはトランプを支持している』という憶測が流布していたのです。前回の大統領選でトランプに投票したというのです」

 「テイラーはそうした誤報に耐えられなくなったのではないでしょうか」

共和党のための憶測が逆効果に

 憶測を流布させた人たちが、スウィフトのファンに共和党候補へ票を入れさせることを目論んでいたとしたら、今回の政治的発言は全くの裏目に出たことになる。

 中間選挙前にスウィフトの政治姿勢が鮮明にならなかったとしても、11月6日に共和党が連邦下院で負けることはほぼ確実で、いまは「いかにダメージを少なくして負けるか」に議論が移っている。

 ただテネシー州を含めた南部・中西部の諸州では相変わらず共和党は強く、議席を確保する保守系議員は少なくない。

 スウィフトさんがインスタグラムで「恐ろしいし、支持できない」と書いたマーシャ・ブラックバーン議員も、7日のスウィフトの発言後、逆に支持率を上げたほどだ。

 共和党の岩盤支持層がいかに強固かということがうかがい知れる。

 それでもスウィフトさんの選挙登録の呼びかけと、反トランプの政治姿勢は他州の若者に伝わり、潮流と呼べるほどの波を形成していることは確かだ。

 現在の関心はむしろ選挙後で、民主党が過半数を奪った場合、トランプ氏が様々な法案を成立させるために連邦議会に歩み寄りをみせるかどうかにある。

 柔軟に民主党と対話して妥協案を探るのか、それとも議会審議を無視する形で大統領令を活用して行政力を強めていくのか。

 トランプ氏は後者を選ぶように思えてならない。