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イノベーション
2018.06.01

新VR元年到来か、スタンドアロン型HMDが切り開く未来
2万円台のヘッドセット登場で簡単にVR動画が楽しめる時代に

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2018年5月に発売されたVRヘッドセット、「Oculus Go」と「Lenovo Mirage Solo with Daydream(以下、Mirage Solo))」が話題となっている。

VRヘッドセットというと、これまでは開発者やゲーマー向けのもの、遊園地やテーマパークなどで楽しむものという印象が強かったように思うが、この2機種は開発者でもゲーマーでもない、ごく一般の「新しい物好き」層からも注目されているのだ。

これらのヘッドセットがVRゲームや開発に興味がない層にまで「買ってみようかな」と思わせる要因は何なのだろうか。

ミレニアル世代が最も期待を寄せるVR体験はゲームではない

冒頭でも述べた通り、VRというとゲームのイメージが強い。もちろんVRの可能性はゲームだけに留まらないのだが、一般的な認知はそんなものだろう。特に、「家庭用」のVRヘッドセットと聞くと、PlayStation VR(以下、PSVR)を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。

IoT Todayでは以前こちらの記事で、ハイエンド機の中では国内で最も広く知られるVRヘッドセットであるはずのPSVRがなかなか普及しない理由を取り上げた。その際、PSVRの利用には「PlayStation 4」が必須なので、ゲームファン以外が「ちょっと買ってみよう」と手を出すにはあまりにも高価だから、と結論付けた。

「Oculus Rift」や「HTC Vive」のようなPCに繋げて使う機種にしても、「VRでしたいこと」がはっきりとしている場合を除き、おいそれと手を出せる金額ではない。「何だかすごいゲームができるらしい」という漠然としたアピールポイントだけでは、なかなか一般層の心に響かないであろうことは容易に想像できる。

ではなぜOculus GoやMirage Soloは、一部とはいえこれまでVRに関心のなかった層にもアプローチすることができたのだろうか。

ここで、5月23日にアンケートアプリを開発・運営するテスティーが発表した「VR/ARに関する調査」結果を見てみよう。

10代~20代の、俗に「ミレニアル世代」と呼ばれる世代の男女1,057名を対象に行われた同調査によると、VRを「知っている」と回答したのは10代で74.8%、20代で68.8%。その中で、VRを実際に「体験したことがある」と回答したのは10代で25.4%、20代で23.6%。

さらに「体験したことがある」と回答した人がVRを体験した場所やデバイスについての調査では、10代の第1位が「ゲームセンター、アミューズメントパーク」で33.3%。20代の第1位も「家庭用VR機器」で33.1%。また、「家庭用VR機器を体験したことがある」と回答した人が利用したコンテンツ名としてPSVRのゲーム名が複数挙げられている。

認知度が高いのか低いのか、数字だけ見ると微妙なところだが、IoT Today読者からすると「若者でも以外と知らないものなのだな」と感じるのではないだろうか。ともあれ、やはり多くの若者にとって「VR=ゲーム」であることに変わりなさそうだ。

一方、全員対象の「今後、体験してみたいと思うVR体験」という質問への回答第1位は「映画」で52.0%。ゲームは46.1%で2位と後塵を拝する結果に。

テスティー調べ。画像はプレスリリースより引用

VR体験をしたことがない人も含まれるため、回答者によって「映画×VR」体験のイメージにばらつきがありそうだが、ここでは若者が最も「体験してみたい」と思うVRを利用したコンテンツが映画であることに着目したい。

ちなみに、体験者と未体験者それぞれに対して行われた「今後VRを体験したいと思うか」という項目への回答結果は下記の通り。

テスティー調べ。画像はプレスリリースより引用

10代、20代共にVRへの関心度の高さが伺えるが、特に「お金を払ってでも体験したい」と回答した体験者の割合は、未体験者に比べて3倍も高い結果だ。VRはよく「一度(VRヘッドセットを)被ってみないと分からない」技術だと言われるが、この結果にも如実に表れている。

手軽な「個人用ホームシアター」として普及し始めたVR

以上の調査結果を踏まえた上で、冒頭で触れた2つのヘッドセットがなぜ注目されているのかを見ていこう。

まずはその価格。5月11日に国内で発売されたLenovoのMirage Soloが5万5296円。5月2日に発売されたFacebook傘下のOculus VRによるOculus Goは32GB版が2万3800円、64GB版が2万9800円(全て税込)だ。特に、割り切った性能で3万円以下に抑えたOculus Goが人気を集めている。

今回Oculus GoとMirage Soloの違いについての詳細な説明は省くが、簡単に言うとVR空間の中を歩き回るなど、全身を使ったVR体験ができるのがMirage Solo、頭の前後左右の傾きなど、限定的な動きに対応しているのがOculus Goだ。

微妙に違う2つのヘッドセットだが、共通する最大の魅力はスタンドアロン型であるということ。PCやゲーム機につなぐ必要がなく、スマートフォンを入れ込む必要もない。電源を入れて頭に被るだけですぐに使用開始できるという手軽さが売りのヘッドセットなのだ(Oculus Goは初めのセットアップにスマホアプリを使用する)。

だが、3万円以下とはいえVRゲームや360°動画が見れるというだけではまだ高い、と感じる人が多いだろう。ではどういった用途が一般層にも「買っても良いかな」と思わせているのかというと、動画鑑賞である。これらのヘッドセットを被って普段スマホやPC、テレビで視聴しているNetflixやAmazonプライムビデオ、YouTubeやニコニコ動画といった動画配信サービスを使ってみると、部屋にいながらにして映画館の巨大スクリーンを独り占めしているような体験ができてしまう。

3万円以下で「自分だけのホームシアター」が持てると聞けば、映画好きならずとも心惹かれるものがあるだろう。そしてこの用途は前出の調査結果で明らかになった、「若者がVRで体験したみたいこと」第1位とも合致する。

実際に筆者はOculus Goでいくつか動画を見てみたが、デフォルトのメディアプレイヤーで数分の動画を再生するだけでも、スマホやテレビで見るのとは全く違う没入感を体験することができた。個人的にはOculus Goで見る動画の画質イメージはDVDのそれに近い。最近のスマートフォンに比べると高画質とは言えないが、単純な画質の差では埋められない体験ができることは間違いない。

3万円以下で自分だけのホームシアターが持てるかも・・・。画像はイメージ

もちろん、いち早くOculus Goに公式対応したDMM.comのVR向けアプリ「DMM VR動画プレイヤー」などでVR動画を見たいというニーズもあるだろう。しかし、もしもVR動画やVRゲームを体験してみてピンと来なくとも、頭に被るだけで使えるホームシアターが手に入ると思えば、値段を見て「買ってみても良いかな」と感じる人は少なくないはずだ。

乱暴な言い方をすれば「潰しが効く」と思わせた点が、絶妙な価格やクチコミと相まってじわじわと購入者を増やす要因になっているのだろう。これにより、これまでVRに触れてこなかった層からの興味・関心も引き始めている。

「動画を見る」というのは、程度の差こそあれど多くの人にとって特別なことではない。言わば日常の一コマだに過ぎない。それに比べると、コントローラー片手にゲームをプレイする、という行為に非日常感を感じる人は多いだろう。

一般層にVR体験へのハードルを乗り越え、「(ヘッドセットを)被ってみよう」と思わせるには、言葉を尽くしても共有し辛い「非日常的な体験」よりも、イメージしやすく魅力的な「日常の延長」体験ができることをアピールしていく必要がありそうだ。そしてVR体験者が増えれば増えるほど、ユーザー側からVR技術の新しい活用アイデアも生まれてくるだろう。

巷ではOculus Goの登場を「かつての初代iPhoneをほうふつとされるとも言われているが、まさしくその通りだと思う。Facebookが目標に掲げた「VR人口10億人」への布石が打たれたと言って良いだろう。一家に一台VRヘッドセットが置かれる日は、思ったよりも近そうだ。

JBPRESS

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