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イノベーション
2018.04.28

日本式ビジネスの理解がIoT事業の明暗を分ける
コンサルタントが教える新規事業成功の鍵

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本コラムの読者の中には、新規事業企画を担当する方も多いのではないかと思う。しかし、いざIoTで新規事業を考えたとしても、思わぬ要因が妨げになり進展を阻まれることもあるだろう。

そこで、IoT事業のコンサルティングを行うウフルにてビジネスコンサルティング部長を務める林大介氏にIoTを事業化する際につまずきがちなポイントを聞いた。話題のコワーキングスペースWeWorkにあるオフィスにお邪魔した。

ウフル ビジネスコンサルティング部 部長・林大介氏

IoT新規事業の成功を妨げる4つの要素

林氏によれば、IoT新規事業の成功を妨げる主な要因には、以下の4つが挙げられるという。

(1)お金と成果のジレンマ

まずは、「お金」の問題があるという。新規事業の場合、ある程度の予算を付けて取り組まないと成果も得られにくいわけだが、一方で新規だからこそスモールに始めたいという意識も働く。そうなるとPoC(概念実装)やPoT(技術実装)にとどまってしまい、ビジネスへの展開ができないことがあるそうだ。そうしたジレンマが新規事業を発展させていく際のハードルになることがあるという。

(2)肥大化するプロジェクト、落ちていくスピード

日本企業の場合はその組織構造の特性から、人数が多くなりすぎることがハードルになる場合があるという。事業構想が大きくなるにつれて、当然ながら携わる人が増えていく。そうなると、意思決定に時間がかかるようになり、IoT新規事業に必要なスピード感が生まれてこない。また、携わる人たちの食い扶持まで稼がなければならず、より大きな成果を追い求める必要も出てきてしまい、バランスに欠ける状況になる。

(3)技術を妄信する人と、技術を軽んじる人

特に大企業に顕著だというが、自分が歩んできた技術の道が全てと思い込んでいる人が多く、新しい考え方を提示しても文化の違いから素直に受け入れられないケースが多いそうだ。また、その新しいやり方を提示してくれる人(例えば外部のエンジニアなど)に対して懐疑的になり、あまり信用しない傾向にあるという。こうした人々は技術による差別化を意識しすぎるあまり、視野狭窄に陥っているケースもあるという。

一方で、IoT事業はビジネスモデルのあり方やスピード、先行者によるデータ蓄積が競争優位性になるにもかかわらず、そうした要素を戦略的優位として考えられない人もまた多いという。

(4)壁は破らずに超えるもの、整備された日本の法規制

そして、避けがたい課題としては法規制の問題がある。発展著しい中国では、法規制の整備が進むスピードを超えて技術的進歩が進んでいるため、どんどんと発展を遂げている。一方で、法規制が既に整備されている日本においては、何をするにも法規制がハードルになる可能性があり、IoT新規事業に必要なスピード感が損なわれることがあるのだ。

こうしたハードルを乗り越えた先に、IoT新規事業を展開できる可能性が見えてくるということだ。

ヒト・モノ・カネをどうやって集めるか

IoT新規事業をスピード感をもって進めるためには、意思決定権のある人物を巻き込むことが必要だ。それには、その人物を納得させられるストーリーを描けるかどうかが大事になってくる。ヒト・モノ・カネをかけることで得られる成果が投資に見合うかどうか、そこを示せなければ事業の立ち上げはおぼつかなくなるだろう。

そうしたヒト・モノ・カネをどうやって調達するか。そのことが、IoT新規事業の成否を分けるといえるだろう。

・ヒト集めは政治家タイプに任せる

プロジェクトメンバーを支える「ヒト」を集めるためには、キーマンの存在が欠かせない。どういう人がキーマンになりうるかというと、既存事業に問題意識を持っており、社内政治が得意な人。例えば、新しい事業で必要な人材をそろえようと思った時、各部署のエース級の人を集める必要があったとする。そうしたときに、社内政治が得意な人のほうがスムーズにいくというわけだ。

また、力強く魅力的な構想を立てられる人もキーマンになり得るという。そうした構想には支援者が集まってくるためだ。

・モノづくり大国の強みを活かす

IoTにおいては、最終的にモノがものをいう。どんなに優れたビジネスモデルやサービスを開発したとしても、それを実現させるためのモノづくりがうまく行かなければ実現することは叶わない。そういう観点では、日本は有利だと林氏は言う。モノづくり大国としての技術の蓄積があるため、信頼性や品質の点からも新しいサービスをきちんと実現できるモノづくりができるためだ。企画と製作が密に連携を取って開発を進められる。そうした日本の特性を活かした開発が可能だというのだ。

・カネの集め方には工夫、考え方には計画が必要

プロジェクトを進めるにあたって、資金は重要な問題だ。新しい事業に対していきなり巨額の資金を投入することは稀であろう。その場合は、先にマーケットの支持を得てしまうというやり方がある。具体的にはジョイントベンチャーなどにより、協賛者を募るということだ。そうすることで、出資もしやすくなるだろうし、事業の見通しもより信頼性が高まっていく。

また、より手軽に自社だけでも実施できることとしては、クラウドファンディングも考えられる。試作品の段階で一般消費者へ訴求し、一定額が集まれば市場の支持を見える化できる。一種のテストマーケティングとして利用するのだ。

資金は調達ばかりでなく、考え方を見直す必要もあるかもしれない。すなわち、予算の組み方を変えるのだ。例えば、PoC/PoTとして実施した場合、それ自体がPRにつながるようであれば広告費から予算を配分してもいいかもしれない。そのように、予算のポートフォリオを変えることも必要だと、林氏は言う。

スピード、前進力、ポテンシャルを出し切りIoTの勝者に

IoTではスピードが重要。そのため、失敗を怖れずにどんどん進めていくことが必要となる。したがって、市場ができるのを待つのではなく、自身のプロジェクトによって市場を作る意気込みで進めるべきなのだ。そのためには、プロジェクトメンバー全員が成功を信じて進んでいくほかないだろう。

林氏は日本にはIoTで成功できるチャンスがあるという。先に触れたように、IoTでは最終的にはモノづくりがものを言うためだ。いくら優れたビジネスモデルやサービスを構想できたとしても、それを実現できるモノが作れなければ日の目を見ない。そういう観点では、モノづくり大国として技術を培ってきた日本には、まだまだ勝ち目があるというのだ。

そのためには、世界が広がるのを待つのではなく、自身で世界を作り広げていく、そうした姿勢で新規事業に臨んでいく必要があるといえるだろう。

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