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テクノロジー
2018.01.13

反撃の狼煙を上げる「日本製」音声認識AI
日本産の音声アシスタントはGoogle、Amazonに太刀打ちできるのか

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2017年後半に登場し、「ユーキャン新語・流行語大賞2017」にもノミネートされた「AIスピーカー」(スマートスピーカー)。一部では「2017年はスマートスピーカー元年」とも言われており、日経トレンディの「2018年ヒット予測ベスト20」の1位にも「マルチAIスピーカー」(いわゆるスマートスピーカーのこと)が選ばれた。

まだまだ話題のスマートスピーカーだが、搭載されている音声認識AIアシスタント(以下、音声アシスタント)は現状、海外産のものばかり。AmazonのAlexaや、Googleアシスタント。そして、スマートスピーカーは未発売だが、AppleのSiri。日本メーカーから発売され始めたスマートスピーカーも、搭載している音声アシスタントはAlexaかGoogleアシスタントのどちらかだ(※1)。

スマートスピーカーの日本上陸が遅れた理由によく挙げられるのは、「日本語の難しさ」。つまり各社音声アシスタントの日本語化に手こずっていたということだが、ならばなおのこと、日本国内の企業が有利なように思える。

昨年末に上陸したばかりのAlexaなどはともかく、Siriが日本語に対応したのは2012年3月8日(世界で初めてiPhoneに搭載されたのは2011年10月4日)。6年近くもの間、日本企業は手をこまねいていたのだろうか?

実は、そんなことはない。

Siriの影に隠れてしまいがちだが、国内にもスマートスピーカーが登場する前から日本語の音声アシスタントを開発している企業は複数存在する。そうした日本企業の音声認識は今後、AlexaやGoogleアシスタントと渡り合っていけるのだろうか。

本記事では日本語に対してアドバンテージがあるはずの、日本企業産「日本語音声AIアシスタント」を見ていこう。

※1 LINEのClovaは韓国NAVERとの共同開発とはいえ、国産とも言える。しかしClovaに関しては過去IoT Todayでも度々記事化してきたため、今回は割愛した。

18億回以上利用された、NTTドコモの「しゃべってコンシェル」

まずは、2012年3月1日より提供されているNTTドコモ(以下、ドコモ)のしゃべってコンシェル。通信キャリアにNTTドコモを使用している読者の多くにとって、執事服を着た羊のキャラクターはなじみ深いだろうし、そうでなくとも一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。

スマートフォンの画面上にいるキャラクターに向かって、利用したいサービスや調べたいことを話しかけて利用する。

デフォルトの羊以外にも、豊富な選択肢から自分の好きなキャラクターを選んでアシスタントに設定できることや、iOSとAndroidどちらでも利用可能(iOS版はホーム画面上にキャラクターを表示させておくことはできない)な点が特徴だ。

前身サービスである「iコンシェル」と違い、事前申し込み不要、基本無料で使用することができる。Siriの日本語対応(2012年3月8日)に一週間ほど先駆けてリリースされたことも、当時話題となった。

このサービスで培った技術や知見は同社の他AIサービスにも生かされており、しゃべってコンシェルの技術を応用した「自然対話プラットフォーム」を採用した対話型ロボット玩具「OHaNAS」をタカラトミーと共同で開発。2015年10月に発売している。

さらに2017年6月23日、ドコモは2018年提供予定の新AIサービスの基盤となる「AIエージェントAPI」を開発したと発表した。

発表によると、AIエージェントAPIを構成する柱の一つである「多目的対話エンジン」は、18億回以上の利用実績があるしゃべってコンシェルなどで培った自然言語処理技術によって自然な対話を通したサービス提供を可能とするとのこと。

加えて2017年10月18日には、2018年春に「AIエージェントサービス」を提供予定だと発表している。こうした動きからも、ドコモがAIや音声認識分野への研究開発を意欲的に行なっていることが分かる。

しゃべってコンシェルと同じく、ドコモユーザーのみを対象としたサービスも多いだろうが、6年近くに渡って蓄積してきた音声アシスタントの知見をどのようにサービスへ落とし込むのか、大いに期待したいところだ。

圧倒的ユーザー数を誇るヤフーの「Yahoo!音声アシスト」

しゃべってコンシェルに続き2012年4月2日にリリースされたのが、ヤフーの「Yahoo!音声アシスト」(登場時の名称は「音声アシスト for Android」)。こちらも検索の他、特定のアプリを起動したりスマートフォンの設定を変更したりといったことを音声で行なうことができる。

ヤフーが音声アシストや「音声検索」などの音声認識サービスに利用しているのは自社開発の音声認識エンジン「YJVOICE」。2015年には開発にディープラーニングを導入して認識精度を大幅に向上させた。

人間味を感じさせる返答を多数用意して話題となったSiriや、既存の有名キャラクターを利用できるしゃべってコンシェルに比べると、音声アシストはどちらかというと実用性を重視して開発された印象を受ける。

しかし、音声アシストは2017年3月に新しく「雑談bot機能」をリリースした(※2)。単に音声アシストと雑談がしたいという需要の高さを受けてのものだけでなく、サービス全体の対応語句を増やすことで、より自然な日本語のやりとりをできるようにする狙いもあるのだろう。

早くから連続した雑談にも対応するなど、この点を重視していたしゃべってコンシェルに比べると数歩遅れている印象を受ける。だが、国内シェアの拡大を考えた際、ヤフーには大きな強みもある。

それは、一言で言えば日本人ファンの多さだ。特に中高年以上のネットユーザーの中には、根強い「GoogleよりYahoo!」派も多数存在する。加えてYahoo! JAPANは単なる検索サイトではなく、日本最大のポータルサイトである。そこを入り口として展開している各サービスにも、多くのファンを抱える人気サービスが多数存在する。データを見てみよう。

ニールセンが2017年12月19日に発表した、2017年の日本におけるPCとスマートフォンの2スクリーンでのインターネットサービス利用者数ランキング(※3)によると、PCでの利用者数トップは「Yahoo! JAPAN」で、平均月間利用者数3,377万人。スマートフォンからの利用者ランキングではGoogleに次いで2位となっているが、それでも平均月間利用者数は5,631万人だ。

(画像はプレスリリースより引用)
(画像はプレスリリースより引用)
(画像はプレスリリースより引用)

 

IoT Today読者の中にも、インターネットでニュースを見ようと思った際はまずYahoo! Japanのトップページを開く、というユーザーもいるのではないだろうか。たとえ「検索はGoogle派」であっても、だ。

これだけの利用者がいるということは、国内で相当なブランド力を保持しているということ。今後のサービス展開次第では、現状GoogleやAmazonがカバーできていない多くのユーザー層を取り込める可能性があるということだ。

日本人は、家電を音声操作することに対し抵抗を感じる傾向にある。それに伴い、スマートスピーカーの普及もさほど進んでいない。今、国内で音声アシスタントの利用率を高めていくには、単に高品質なサービスを提供するだけでは足りないのだ。まずはユーザーの音声操作への抵抗感をできる限り取り去る必要がある。

その点、国内で圧倒的な支持を受けるYahoo!のサービスであれば、「(Yahoo!なら)安心」「使ってみても良いかも」と思わせる力がある。あまりネットリテラシーの高くない、今「スマートスピーカー」と聞いてもピンと来ない中高年層にもアプローチできる可能性を秘めているのだ。

加えて、ヤフーはディープラーニングに特化して自社開発されたスパコン「kukai」を保有していることにも注目したい。kukaiはYJVOICEへの活用も想定されているので、YJVOICEを利用している音声アシストの精度も今後飛躍的に向上する可能性がある。

データ収集とそれを活用したプラットフォーム構築を手堅く進めているドコモと、起爆力を秘めているヤフー。どちらの音声アシスタントも、まだまだ伸びしろを感じさせる。

次回以降、独自路線を進むシャープの「エモパー」についても同テーマで考察していく。

※2 音声アシスト×AI(人工知能)―革命的新機能実装の舞台裏―(第1回プロローグ編) - Yahoo!検索ガイド - Yahoo! JAPAN

※3 TOPS OF 2017: DIGITAL IN JAPAN ~ニールセン2017年 日本のインターネットサービス利用者数ランキングを発表~

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