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イノベーション
2017.10.31

「VR人口10億人時代」に向けて日本がすべきことは
日本でのVR普及が遅れている理由や対策について考察する

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FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は、2017年10月11日(水)、12日(木)にかけて開催されたVR開発者向けイベント「Oculus Connect 4」の基調講演で、「Facebookが目指すゴールは、VRのユーザー人口を10億人にすること」という趣旨の宣言を行った。

10億人といえば、少なく見積もっても世界人口の1割以上。途方もない数字だが、実際VR元年と言われた2016年から一年経という今、VRはどの程度普及しているのだろうか。

日本国内ではまだまだ「限られた分野、限られた人たちのためのもの」という認識の人々が多い印象だが、海外ではどうなのだろうか。

本記事ではVR体験に必須となる専用ヘッドセット(以下、HMD)から、その辺りの実情を紐解いていく。

世界的ヒットのPSVR、日本で苦戦する理由は

VR用のHMDには、スマートフォンをセットして使う簡易的な物もある。しかし安価な分、体験の質は劣る。ここでは、ある程度本格的な体験ができるHMDに対象を絞って見ていこう。

家庭用VR機器として最も認知されているのは、恐らくソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)のPlayStation VR(以下、PSVR)で間違いないだろう。2016年10月13日(木)に発売されたこのHMDは、家庭用ゲーム機ということで一般層にも親しみやすく、それまでのハイエンドHMDに比べるとぐっと価格も抑えられている。

SIEの発表によると、2017年6月時点でPSVRの累計販売台数は100万台。一方、代表的なPC向けハイエンドHMDの、2016年末までの各販売台数は、Oculus Riftが24.3万台、HTC Viveが42万台(調査会社SuperData Researchの予測による数値)。これらと比べると、PSVRの健闘ぶりがよく分かる。

参考までに、同予測結果を取り上げたニューヨークタイムズの記事(※)によれば、2007年発売の初代iPhoneは初めの3カ月間で140万台近くを売り上げたとのこと。

しかし日本にいると、PSVRがそこまで普及しているという感覚がある方は少ないのではないだろうか。KADOKAWAが発売しているゲーム雑誌『ファミ通』の調査によると、2017年3月26日時点で日本国内でのPSVRの販売台数は10.2万台。この数字だけでは判断し難いかもしれないが、世界での販売台数と比べると少ないと言わざるを得ない。

実は、PSVRが日本で苦戦している理由の一つは明快。日本では海外ほどPlayStation 4(以下、PS4)が普及していないからだ。PSVRはPS4の周辺機器なので、スタンドアローンでは動作しない。使うにはPS4を持っていることが大前提なのだ。

※ 2017年3月26日(日)公開のThe New York Times「Popularity of Sony’s PlayStation VR Surprises Even the Company」より

PS4の普及率の差がVR普及率の差に

別の記事でも触れたが、世界的に見るとPS4は2017年度中に販売台数累計7800万台に達する(※)ほどの大ヒットハード。歴代PlayStationシリーズの中で最も売れたゲーム機、「PlayStation 2」の販売ペースをも上回る売れ行きだという。

しかし、日本での販売台数は7月26日(水)時点で500万台(メディアクリエイトの集計による)。世界累計の10%にも達していないのだ。

元々PS4を保有していれば、約5万円でPSVRが使用できるようになる。しかしPSVRにPS4、そしてPlayStation Cameraを一から揃えるとなると、10万円近くかかってしまう(これでも、従来のPC向けHMDやそれを使用するのに必要となるハイスペックPCを併せた金額に比べれば十分手軽と言えるのだが)。

また海外に比べると、国内の家庭用ゲーム機市場が冷え込んでいるという事情もある。海外ユーザーにとって大きな魅力となった「身近な家庭用ゲーム機の周辺機器」というPSVRの強みも、日本国内では通用しない。残念ながら日本の多くの一般ユーザーにとって、PS4は「身近な存在」ではなく、PSVR共々「限られたゲーマー向け」のハードなのだ。

※ 2017年10月3日(火)に発表された、共同通信によるSIE会長アンドリュー・ハウスへのインタビューより

ビジネス利用の拡大と廉価版HMDが普及の鍵となるか

それでは、日本ではどのようなアプローチをすれば、来る「VR人口10億人時代」に取り残されずに済むのだろうか。

それにはやはりVRの用途拡大=「一般層にも分かりやすい、ゲーム以外での魅力的な活用事例を増やす」ことと、単体で動作可能かつ現実的な価格・品質のHMDの普及は必須だろう。

ユニークな事例を一つ挙げると、たとえばウェディング業界。ワタベウェディングは2016年8月26日より全国の店舗にサムスンの「Galaxy Gear VR」を導入し、日本にいながら花嫁目線でハワイのチャペルの様子を体感できるコンテンツなどを提供している。

ワタベウェディングのプレスリリースより

リゾートウェディングは近年流行しているが、場所が場所だけに何度も下見に行くことは難しい。そこでVRを用いたバーチャル体験を提供し、当日まで現地に行けずともイメージを掴んでもらおうというわけだ。

用いている技術は目新しいものではないかもしれないが、もともとVRと相性が良いとされる旅行業界ではなく、ウェディング業界にVRを持ち込み、二つの流行を掛け合わせた面白い試みだ。

そして、肝心のHMD。とにかく「VRとはどんなものか」ということを認知させたいだけなら、今までのように紙製などの簡易HMDをイベント会場や雑誌の付録などで配布していく方法もある。しかしそれだけでは「へー、面白いね」で終わってしまい、市場の成長にはつながらない。それも必要だろうが、もはや次の手を打つ段階だろう。

VRがどんなものかを知り、興味を持ったライトユーザーが「もう少し上質なVR体験をしてみたい」と思った時、出せる金額はせいぜい一万円程度ではないだろうか。

その価格帯だと、サムスンの「Galaxy Gear VR」やGoogleの「Daydream View」が挙げられる。スマートフォンをセットして使うタイプのHMDで、ハイエンド型には劣るもののそこそこ高品質な体験ができる。しかしセットできるスマートフォンの機種が極端に限定されている物が多い上に、比較的高スペックな端末が要求される。安い!と思って飛び付いたらトータルでのコストは5万円を超えてしまった……なんてことはざらだ。

その点、「Galaxy Gear VR」はサムスン製のスマートフォンであれば大抵使用できるため、このタイプでは頭一つ分抜きんでてヒットしている。しかしそれでも、限定された機種のスマートフォンが必要な点は変わらない。ゲーム機やPC、スマートフォンを使わずともある程度高品質なVR体験ができる手ごろなHMDが欲しい、というのは贅沢な願いなのだろうか?

実は、そんなHMDが近々発売される予定だ。冒頭で紹介した「Oculus Connect 4」というイベントで、PCもスマートフォンも必要としない、スタンドアローン型のHMD「Oculus Go」が発表されたばかり。価格は199ドル(約22,000円)、2018年度の出荷となる予定とのこと。

Introducing Oculus Go

価格だけ見ると、「ちょっと興味がある」層がこぞって手を出すかどうかは微妙なところではある。しかし体験の品質やコンテンツによっては、十分ヒットの可能性を秘めている。

Oculusでは同じくスタンドアローンの「Santa Cruz」も開発中だが、高価格帯となる予定だ。となると、やはり普及の鍵を握るのはOculus Goだろう。Oculus Goの発売を皮切りに各社から安価な一体型HMDが登場するようなことになれば、それが簡易HMDを卒業したユーザーの「ステップアップ先」となるかもしれない。

現状、数百円から数千円で購入できる簡易HMDと、最低でも五万円以上かかる高品質なHMDとの間には、体験の質という意味でも価格帯という意味でも厚い隔たりが存在する。

その間のニーズを満たす、特にGear VRやDaydream Viewが取りこぼした分を受け止めるHMDの登場が待ち望まれているのではないだろうか。

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