賞金総額20億円超えも。世界を席巻する「e-sports」
日本でも期待される周辺ビジネスは加速へ

コンピュータゲームやビデオゲームでの対戦をスポーツ競技と捉えたe-sports(エレクトロニック・スポーツ)が、世界で盛り上がりを見せている。
今年の4月にはOCA(The Olympic Council of Asia)がe-sportsをオリンピック競技にすると発表し、各種メディアでも取り上げられた。
市場規模1,500億円以上。賞金総額約20億を超える大会も
ゲームに関するリサーチ会社SuperData Researchの「e-sports research report 2017」によると、2019年には世界におけるe-sports市場が13億6,000万ドル(約1,510億円)に昇ると見立てている。e-sportsはショービジネスとしても発展しており、大規模な会場で大会が開催されている。1回の賞金総額が20億円を超えるような大会もある。

最近ではアメリカプロバスケットボール協会の「NBA」やスペイン・バレンシアを本拠地とするサッカークラブチーム「Valencia CF」がe-sportsリーグを発足するなど、その過熱ぶりが伺える。
世界ではかなりの盛り上がりを見せているe-sportsだが、日本国内での盛り上がりはイマイチ。「聞いたことはあるけど、実際はどういったものなのかわからない」という人も多いのではないだろうか。
ガラパゴス化で世界に遅れをとる日本のe-sports
世界に対して日本がe-sportsで遅れをとっている理由は、ゲーム業界のガラパゴス化にもあると考えられる。“ガラパゴス化”と聞くとワンセグTVや電子マネーを搭載していたフィーチャーフォン(ガラケー)を思い浮かべる人が多いと思われるが、ゲーム業界にも存在する。

かつて家庭用ゲーム機といえば、日本の任天堂が1983年に発売した「ファミリーコンピュータ」だった。後継機である「スーパーファミコン」やソニーの「プレイステーション」も世界中で大ヒットとなり、日本は一大ゲーム大国だったが、近年はそうではない。
e-sportsの大会で使用されるゲームの多くが、PCベースのオンラインゲーム。リアルタイムに仲間と協力してテロリストなどの敵と戦うサバイバルゲームなどが多く「League of Legends(LoL)」「World of Tanks」といった海外のゲームが有名だ。
そんな中、日本のゲーム市場ではスマートフォン向けのものが成長している。矢野経済研究所の「スマホゲーム市場に関する調査(2016)」によれば、国内のスマートフォンゲーム市場規模は順調に伸びている。2017年の予測を見てみると、9,600億円が見込まれており、2012年の2,610億円と比較すると、360%を超える成長となっている。
通勤時に電車内でスマートフォンゲームをしている人を見かけたこともあるだろう。日本人は忙しくしているとよく言われる。ゆえに、時間をかけて行なう据え置きのPCゲームよりも、スマートフォンで隙間時間に楽しめるスマートフォンゲームの方が日本人には合っているのかもしれない。
e-sportsの普及で広がるビジネスチャンス
スマートフォンゲームの人気もあり、これまでe-sportsでは世界に遅れをとっていた日本。しかし、2015年1月には国内プロe-sportsチームの「DetonatioN Gaming」が、日本初のフルタイム・給料制ゲーミングチームとして活動を開始。2016年4月には東京アニメ・声優専門学校が、プロゲーマーを育成するための専門コースを開講したり、同年9月には賞金総額5,000万円のe-sportsイベント「モンストグランプリ2016 」が開催されたりと、徐々に盛り上がりを見せている。

ニコニコ動画やYouTubeでは自分がゲームをプレイしながら実況する映像の「ゲーム実況」や、ゲームのエミュレーター機能を使って実行速度のスロー化やコマ送りをすることで通常のプレイでは再現できないようなスーパープレイを作り出したり、ツールを使ってゲーム攻略までのスピードを追求したりする「TAS」と呼ばれる映像が人気となっている。
「中高生が思い描く将来についての意識調査2017」(ソニー生命保険)で、男子中学生がなりたい職業の第3位にランクインしたYouTuber。そのYouTuberとして人気のあるHikakinやはじめしゃちょーもゲーム実況を行なっており、若年層にもファンがついていると考えられる。
さらに、ソニーの「プレイステーション4」ではシェア機能が標準搭載されており、ビデオクリップやスクリーンキャプチャのSNS投稿、ゲームプレイの生配信など簡単に自分のプレイを外部に発信できる。
このようにゲーム業界が盛り上がるプラットフォームは整っている。今後はe-sports周りのビジネスの加速も期待できるだろう。ゲームが流行ることでプレイヤー数が広がり、パソコン、デバイス、周辺機器などが売れるようになる。また、ショービジネスとしても発展しているe-sportsでは周辺産業にも期待できる。
先述の東京アニメ・声優専門学校のコースにはプロゲーマーを育成するコースだけではなく、イベント運営に必要なプロデュース業や、司会・MCを学ぶコース、チームの運営をマネジメントするコースなど様々なものが用意されている。これらのビジネスモデルに加えて、コンサルティングなど新たな需要も出てくるだろう。
国内でも徐々に注目を集め始めた感があるe-sports。世界で人気のあるタイトルで日本人が大金を手にするようなことがあれば、メディアなどでも取り上げられ、一気に盛り上がるポテンシャルを秘めているのではないだろうか。
スポーツ観戦に目を向けると、サッカー日本代表戦がある日は日本代表のユニフォームを着用してパブリックビューイングで応援する人が多い。それと同じように、今後はe-sportsに参加しているゲームチームのユニフォームを着用して観戦をする人が街にあふれるような日が訪れるかもしれない。