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イノベーション
2017.09.19

カネの匂いがするIoTとは?
ビジネス成功の鍵は「見える化」の向こう側

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日本の製造業界でIoTが話題になって少し経つ。IoTとは「Internet of Things」の頭文字を取ったもので、世の中の様々な「モノ」がインターネットに接続することによって制御できたり、情報が取得できたりする仕組みである。

これによって大きなパラダイムシフトが起きようとしているわけだが、生活変革だけでなく、それに伴う経済効果に期待を寄せる人々も多いだろう。

では、IoTが普及し様々なモノがインターネットに接続したら誰が“儲かる”のか。モノに機能を追加するためのモジュールメーカーだけが儲かるのでは、日本経済に与えるインパクトは限定的になってしまうだろう。

インターネットにつながった「モノ」について何かしら特有のメリットがあって初めてIoTの価値が生まれてくるわけだが、そのメリットが利用者に感動を与え、コストを下げる内容でなければ産業としては苦しいものになりそうだ。

IoTが期待先行で尻すぼみになってしまうのか、それとも真に世の中に変革を与えビジネスとして伸びていくのかを、2017年8月28日に行われた「IoT&H/W BIZ DAY 4 by ASCII STARTUP」での基調講演「IoTは金の匂いがしないのか?」(野村総合研究所 鈴木良介氏)を中心に考察した。IoTはビジネスとして成功するのかどうか。成功するにはどのような要素が求められるのかを考えていきたい。

登壇する野村総合研究所の鈴木良介氏

 

IoTの導入で合理性を追求できるのか?

産業が新技術導入の取捨選択をする際、圧倒的に分かりやすい基準となるのは、それを導入してコストが下がる、売り上げが伸びるなどの経済的なメリットがあるかどうかだ。

企業にとっては倫理的に問題のない中で経済的な効果が得られるのであれば採用しない理由はない。しかし、コストを下げるアプローチと売り上げを伸ばすアプローチはまったく異なる。それぞれのアプローチに応じて考えてみたい。

データ収集だけでは足りない。IoTゴミ箱の導入でコスト削減できた理由

最初に鈴木氏が紹介したのは、「BigBelly」という、ゴミ箱にセンサーを搭載した製品。ゴミ箱にセンサーが入ったことで、

・ゴミの蓄積情報が常に監視できるようになり回収タイミングの最適化が図れる
・ゴミ箱ごとの回収状況が分かるため、ゴミ箱の配置の最適化を図れる
・ゴミを自動的に圧縮できる機能があり回収の頻度を減らせる
・太陽光パネルを実装しておりレイアウトフリー・環境に優しい

というメリットを生んでいるという。

人の往来が激しいレジャー施設や大学の構内でのゴミの管理は決して楽ではない。ゴミ箱を設置しても、管理を怠りゴミが溢れてしまっているのでは意味がなく、また、逆に頻繁にゴミの処理をしようとすると、回収コストが大変だ。

BigBellyを採用することで、アメリカのとある大学ではゴミの回収作業にかかるコストを大幅に削減できた。具体的には年間1560時間、ゴミ回収車の燃料費1300Km分を圧縮できたのだ。

「1台80万円ほどするそうですが、トータルで人件費よりも安くなったそうですよ」と鈴木氏も付け加えている。

しかしこの結果は、IoTセンサーでゴミの情報が見えるようになったことだけでもたらされたものではない。その後のアクションとしてゴミ箱設置やゴミ回収のタイミングを最適化できていることがポイントなのだ。

このように、製品を導入するだけで課題を解決できるわけではなく、それをどのように導入し、どのように運用するかという戦略まで見据えなければ、意味がないのである。

見える化の「次」こそが売上に直結する

「見える化」という言葉は一世を風靡したし、今でも重要なキーワードになっている。主に組織の中で、作業状況を上手に共有することで問題発見、業務の効率化、改善に役立てていくための概念だ。IoT技術が進んだことによって、これまで専用センサーが存在せずに見える化が進んでいなかったモノも次々に見える化できるようになっている。

しかし、見える化だけでは納得されない時代になりつつある。何となく現状を捉えられるし業務改善が期待できる、というだけでは顧客からは「金の匂い」がしないと判断され、見放されてしまうのだ。

建設機械などのコマツでは土木作業をデジタル化する「スマートコンストラクション」を2015年に導入している。測量時点で3Dスキャナーやドローンを使って対象の土地をデジタル化し、建築機械の必要数や日程を最適化、さらに余計に土を掘り起こし過ぎないといった細かな過程まで制御できるようになっているのだ。

全体的な情報をクラウドで管理し、それぞれの機械のセンサーと情報をやり取りした結果を、工期の最適化にまで結びつけている。これによって、ただ情報を取得するだけではなくコストを最適化するところまでをシステム化し、大きな売上に結びつけることができた。

見える化した情報を、目的を持って管理・利用するという「次」のステップへの道筋を描き、実行できたことが、結果に結び付いたと言えるだろう。

エモーショナルな体験や共感の提供が新たな価値を生む

モノのデータを見てコストや効率化の改善を図る以外に、IoTがもたらし、お金に結びついていくものがあるという。鈴木氏によれば、それは「今までになかった新しい体験や喜び」だと語る。

例として挙げられたのが、東京ディズニーランドのエレクトリカルパレード。パレードを見ているゲストそれぞれの持つライトが、音楽に合わせて一斉に同じ光り方をしていたというのだ。2015年ごろには「マジカルドリームライト」として、2,500円で販売されていたもの。普通のライトは1,500円だというので、この1,000円の差は何なのだろうか。

鈴木氏は語る。

「仕事が終わったあと一人でディズニーランドに行って試してみたんです。パレードの山車(だし)と手元のハンドライトが同期して光るんですね。これはテンションが上がってしまう面白い体験でした。普通のライトとの差額は『エクスペリエンス』(経験)ですよ!」

実際、こうしたライトは昨今テーマパークやライブイベントでよく用いられている。主催者側がライトの色や光り方を一元管理することで、参加者の一体感やイベントの満足度を高める仕組みになっている。

マジカルドリームライトは、感動を呼ぶことでモノの値段を上げられる、という1つの好例といえるだろう。感情を揺さぶる「エモい」体験は、IoTをビジネスに結びつける大きなチャンスなのだ。

クラウドファンディングの成功事例、IoTによるスポーツ技術向上のソリューション

また、近頃は野球やサッカーのボールにセンサーを埋め込むことで、より正確なスポーツデータを取得できるようなソリューションもできている。

クラウドファンディングでの支援も成功している「スマート野球ボール」(https://www.makuake.com/project/strike/)では、ボールの3次元軌道、回転数、回転軸、スピード、ストライクゾーンへ入ったか、など様々な情報が正確に取得できる。投球記録はクラウドに保存されアプリで確認可能だ。

ストライクゾーンにボールを投げられる割合が日々向上するのも「見える化」されるため、練習の結果技術が向上していることを体感だけでなく数値の裏付けを含めて実感できる。

見える化と、競技者にとっての感動を合わせた製品。クラウドファンディングで支援目標額の3倍をクリアしたのもうなずける。
具体的なメリットの可視化や新たな価値の創出がIoTビジネス成功の鍵

IoTがビジネスになるかどうか。以上の事例からポイントは2つに絞れそうだ。

・「見える化」の先にあるコストダウン、売上げアップなどの具体的なメリットまで用意すること
・感動するレベルの新しい体験を利用者に提供すること

業務寄りのIoTでは、見える化はコストダウンのための手段でなければならない。目的であってはいけないのだ。IoTによってデータ収集は容易になった。それをいかに活用するか。その視点があって初めてIoTがお金を生むことになるだろう。

感動を呼ぶIoTでは様々な感情の揺さぶり方を考えなければならない。データを送受信し蓄積できた後に何を感動に結びつけるか。この手腕が製品開発者には問われそうだ。

「見える化」した次のステップを提示できるかどうか。ここがIoTのビジネス化の鍵となりそうだ。

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