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イノベーション
2017.06.19

IoT時代到来、データ主導社会を目指す日本の課題
東京オリンピックに間に合うか? 「IoTおもてなしクラウド」実現に必要なこと

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2017年6月7日(水)~9日(金)の3日間、幕張メッセの国際会議場において、デジタルメディア活用技術の総合イベント「Connected Media Tokyo 2017」が開催された。

9日に行われた基調講演では、総務省情報通信国際戦略局情報通信政策課課長 小笠原陽一氏が「データ主導社会の実現に向けて」と題した基調講演を行った。その講演の中で「IoT総合戦略」が語られたので紹介しよう。

IoT時代、インフラと制度の整備が大きな課題

インターネットが世に普及し始めてから約20年、これまで進化をし続けて人々から集まったデータはビッグデータへと成長した。これらを活用していく社会を総務省では「データ主導社会」と定義する。

IoTではあらゆるモノがインターネットに接続されることによって、従来では考えられない様々なことができるようになる。これまで個別だったデータ収集システム同士がつながることで、一見関係ないように見えるデータ同士を合わせた分析、新しいデータが見えてくるのだ。人による分析ではなく、AIを活用して、ひたすら分析を続けさせることもできる。現在、私たちを取り巻く環境は「データ主導」で変化を起こしている。これがデータ主導社会というわけだ。

このデータ主導社会を維持・管理・広げていくのが政府の仕事になる。

小笠原氏によると、今の政府が特に注力すべきことは、
1.インフラの整備
2.制度の準備
の2点だという。

総務省情報通信国際戦略局情報通信政策課課長小笠原陽一氏

1番目の「インフラの整備」とは、IoTを支えるネットワークインフラが安定的、かつ継続的に運用される環境を整えるということ。インフラが安定していなければ、モノ(各種機器)から様々なデータを収集すること自体が困難になる。

日本のインターネット回線は世界的に見ても高速だ。FTTHでは2Gbpsという高速サービスも登場しており、YouTubeやニコニコ動画などで2Kや4Kという高解像度でストリーミング配信を視聴することが一般的になってきた。しかし、8Kのストリーミング配信や、それ以上の負荷が掛かれば、現状でもインフラが需要に追い付かず、ネットワークが安定して使えなくなる。SDN/NFVを実装する前に、より帯域幅が取れ、高速なネットワークインフラの整備が急務とされている。

IoT総合基本戦略の基本的枠組み

2番目の「制度の準備」というのは、平たく言えば「流通」と「分析」である。多くの場合、データを集めるところと、データを分析するところは異なっている場合が多い。

たとえば、自社で医療・観光・自動車などからのデータを収集しても、それらを分析して、結果をフィードバックするのは別会社(第三者)であったりする。

本来、自社内で完結させることができれば、データの漏えいインシデントや個人情報保護などを、自社内で管理すればいい。法律等を考慮せず非常にシンプルに事が運ぶのだ。

しかし、「データは集めるが分析は他人任せ」という環境、これが拡大していくと企業データの保護、個人情報の管理といった、いわゆる面倒な法律に注意する必要が出てくる。そこで個人情報保護法との兼ね合いで、「どのように制度を整備していくのか?」が今、問われているのだという。

というのは、個人情報保護法では、「個人情報取り扱い事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」というのが、大原則であるからだ。

現在、データ収集に関しては、同意を得るダイアログが表示されるようになってきているが、不適切に収集されたデータをどうするのか? その際に参照される法律は? といったことが未整備のままである。

訪日外国人を助けてくれる「IoTおもてなしクラウド」

2020年の東京オリンピックに向け、増加するインバウンドに対し、IoTを活用した“おもてなし”をしようという動きが進んでいるという。

「おもてなし」という言葉は、来客を大事にする日本人の心を表現する言葉として、世界的にもすっかり定着した感がある。そんな「おもてなし」の心を踏まえ政府は、訪日外国人に向けて「IoTおもてなしクラウド」サービスを推進しようとしているのだ。

IoTおもてなしクラウド事業

個人情報を守りつつ、気の利いたサービスを提供

「IoTおもてなしクラウド」とは、ICカード内のIDやパスポート情報など、任意のIDを紐づける機能を提供することによって、個人情報保護法を守りつつも、パーソナルデータを活用する仕組みだ。

総務省では早くも、ICカードを活用した訪日外国人向けの新たな実証実験を実施しているという。

具体的には、訪日してきた外国人は日本に到着後、「IoTおもてなしクラウド」を使って自分のパーソナルデータを登録した後、「どのプライベートデータを、誰に提供するのか」は、利用者自身が任意に選択できるようになっており、勝手にデータが使われることはない。

たとえば、宿泊施設へのチェックインを簡素化するサービスにだけにパスポートの情報を提供するといった設定も可能だ。

「IoTおもてなしクラウド」を利用すれば、訪日外国人は面倒な書類などの手続きを簡素化でき、様々な恩恵に与れるだろう。

ホテルに到着したら、カウンターに設置されたICカードリーダーにICカードをかざす。すると、「IoTおもてなしクラウド」からホテルに必要な情報が転送されるため、今までのようにパスポートの提示が不要となるわけだ。

「IoTおもてなしクラウド」を利用すれば、ホテルのチェックインを簡素化できる

パーソナルデータを活用したサイネージによる情報提供

様々なデータを活用できるように設定していた場合、街中にあるデジタルサイネージでは、ICカードをかざすことで、言語を母国語に切り替え、様々な情報が得られる。その場でサイネージに搭載されたWi‐Fiにスマートフォンを接続すれば、より詳しい情報を確認することが可能になるのだ。

災害発生時には、多言語の災害情報が一斉に配信される。具体的には、災害情報を配信すると、各言語に変換され、デジタルサイネージにリアルタイムに表示される仕組みだ。これにより、初めて日本に来た外国人でも、安心して避難場所へ移動できるようになる。

災害情報はデジタルサイネージへ一斉配信される

宗教上の食事制限にも対応

イスラム教やヒンドゥー教といった宗教では、食べてはいけない食材がある。訪日してきた外国人の中にはこういった宗教上の戒律により、食事注文に細かい注意を払わなければいけない人もいる。メニューの中には目に見える食材だけではなく、使われている調味料にも禁忌とされる食材が入っているかもしれないためだ。

「IoTおもてなしクラウド」では、ICカードをかざすだけで、あらかじめ登録しておいた食の禁忌情報などを読み出せる。これによって、レストラン側は食材に制限をもった顧客に対し、希望にそったメニュー提供が実現した。

お土産を購入するときにも、「IoTおもてなしクラウド」は役に立つ。たとえば、通常の免税手続きでは、訪日外国人はパスポートを提示し、免税のための書類を作成する必要がある。これが「IoTおもてなしクラウド」になれば、ICカードをかざすだけでパスポート情報が店舗に伝わり、免税に関わる措置を簡素化できるというわけだ。

免税のための手続きが簡素化される

そのほかIoTおもてなしクラウドは、様々な施設への入場シーンにも利用できる。訪日外国人は券売所でチケットを購入し、同時にチケット購入情報をICカードに紐づける。こうすることで、入口では、ICカードをかざすだけで、入場手続きが可能となり、入場管理が簡素化され、効率化が図れる。

またセキュリティ面でも、必要に応じて本人確認ができるため、不正転売の防止に役立つ可能性がある。

ICカードをかざすだけで、入場手続きが可能となる

2020年に開催される東京オリンピックに伴い、都内では美術館や博物館が連携して1つの入場券でどこの施設でも利用できる共通パスポートのプロジェクトが進行中だ。1回は券売所で入場券を購入しなければならないが、以降はICカードのみで美術館や博物館に入場できるようになる。

ここで問題となるのが、「個人情報取り扱い事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」という個人情報保護法だ。ICカードで情報を読み出す行為自体が、個人情報保護法における第三者に該当するのだ。

実証実験では、この第三者が加わるたびに、用途と情報をスマホアプリでお知らせするかたちをとった。その際は、2000人以上の訪日外国人ひとりひとりに同意をもらうことができたという。

さて、「IoTおもてなしクラウド」の評判は、どうだったのか。

利用者にアンケート調査を実施したところ、訪日外国人の8~9割が肯定的であり、潜在ニーズは非常に大きいことがわかったという。その一方で、登録や同意の手続きが面倒であるとの指摘もあったそうだ。

サービス提供側にとっては、どうだったか? 残念なことに現在の制度がそのままの状態であると、提供がなかなか難しいという話だ。

「便利で技術的にも可能なサービスであるが、今の制度の上ではなかなか難しい。政府は課題に取り組む必要があり、そこに役割があると考えている」と、小笠原氏。

IoTおもてなしクラウド事業 利用者アンケートの結果

日本人の「おもてなしの心」を体現した「IoTおもてなしクラウド」。このサービスを東京オリンピックまでに実現すれば、訪日外国人の心をガッチリと掴みとることができるだろう。それを実現するたに必須の2つのこと。「インフラの整備」と「制度の準備」を、しっかりと固めることを期待したい。

JBPRESS

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