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イノベーション
2017.06.08

AIと人間の脳の到達点はどこへ 茂木健一郎氏が語る人工知能
「AWS Summit Tokyo 2017」特別講演レポート

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5月30日から6月2日まで開催された、Amazon Web Services主催の「AWS Summit Tokyo 2017」が閉幕した。世界最大規模のクラウドカンファレンスとして、最新クラウド導入事例やAWS(アマゾンウェブサービス)クラウドの最新技術が紹介されたイベントの最終日には、脳科学者の茂木健一郎氏を招いての特別講演が行われた。

すでに人工知能は人間の脳を超えている!?

茂木健一郎氏(以下、茂木氏)は、さっそうと壇上に上がると「人工知能(以下、AI)のシンギュラリティは、もう起きている」と語った。AIと人間のシンギュラリティとは、技術的特異点を指し、テクノロジーの進歩によって2045年頃にはAIが人間の知能を超えると予測されている。

脳科学者・茂木健一郎氏

「先日、Googleが開発した囲碁AI『AlphaGo』が中国の世界チャンピオンに勝ったことが話題になりましたが、人工知能の研究者の間では予想された結果でした。そもそも人間の脳とAIを比べること自体がナンセンスだと思います。人間の脳ってそんなにスゴいものでしょうか?」

人は、囲碁や将棋を極めるために一生をかけて修行をしなければならないが、AIならば1ヶ月ほどでプロ棋士のレベルまで育成することが可能なはず、と茂木氏。

「心理学者のチクセントミハイ氏は、人間の意識が処理できるデータ量はだいたい1秒あたり128ビットほどだろう、という論文を発表しています。そのため、人間の脳は人と会話をすると、そのうちの半分くらいが使われてしまうので、そのほかのことに意識を向けることが非常に難しい。処理能力という観点では、人間の脳なんかたいしたことないんですよ」

AIの処理能力を持ってすれば、同時にいろいろなことができるが、人間の脳には限界がある。そのため、囲碁や将棋、チェスなどでAIと人間が同じ土俵で戦うという今の状況そのものに疑問を感じているという。

現在、Amazonが米国でのみ提供しているAIを使ったサービス「Amazon Echo(エコー)」のスキルについても、いまだ“人間の脳”という限られた範囲に向けられて開発が進められているようだ、と茂木氏は嘆く。

「もちろん、人間に合わせてサービスを作ることはマーケティングとして大切なのですが、エンジニアのみなさんには人間の脳のことは気にせず、突っ走ってほしいんです」

人間に求められる“遊び心”とは

AIの進歩に必要なのは「人間に合わせないこと」と、強く語る一方で、AIにも獲得できないものがある、と茂木氏。

「脳の感情やパーソナリティは数値化されていないため、現時点では、AIにパーソナリティを実装することは不可能です。10年後も20年後も、感情とパーソナリティのシンギュラリティはおそらく起こらないでしょう。そのため、AIが進歩した先に行き着くのは、おそらく人間の脳とは違う場所なのではないか、と考えています」

AIと人間の脳の到達点は異なる――。そのことを踏まえると、エンジニアリングやウェブサービスは「人を幸せにする」ことをメインに進化していくべきだと語る。

「今後は、人間にとって心地よい環境を、AIがいかにして作り出せるかという点が、カギになると思います。私の嗜好性を理解してくれるバトラーがいるような感覚です。こちらがいちいち注文するのではなくて、勝手に足りないものを買ってくれたり、床屋の予約も入れてほしい。そんな生活を実現するためには、プライバシーや安全性など、さまざまな問題があると思います。しかし、それらを解決するのがエンジニアリングなのではないでしょうか?」

そして、新たなテクノロジーに執事の役割を担ってもらうことができれば、大人たちが“子供の遊び心”を取り戻せるのでは、と期待を寄せる。

「今、AIによって人間の仕事がなくなるという、いろいろな見解が出ています。仕事がなくなってもいいじゃないですか。仕事がなくなったら遊べばいいんです。IT革命やコンピューター革命の重要なポイントは、テクノロジーによって自由を獲得した人々が“創造力”を解放させられる点なのです」

人々が“創造する力”を獲得するためにサポートしてもらう、それこそが最先端テクノロジーとの正しい付き合い方なのかもしれない。

「何かに夢中になって遊んでいた子供の頃ほど、幸せなときってありますかね? そういう時間をある程度確保することが、これからの人類社会の進むべき方向なのかな、と思います」

最後に「人類の未来は明るいと思います」と力強く語り、講演を締めくくった。

「Amazon Echo」の日本版はいつ発売される?

茂木氏による脳科学とテクノロジーの特別講演終了後には、AWSの今後の構想が発表された。なかでも注目を集めたのが、日本語版の発売が待たれるデバイス「Amazon Echo(エコー)」に搭載されている音声認識・入力技術「Alexa(以下、アレクサ)」についてのスピーチだ。

スピーチの冒頭では、アレクサに今日の天気を尋ねたり、スピーカーをONにしたりAmazonで注文をしたりと、人々の生活に寄り添ったサービスのイメージ動画を紹介。多くのユーザーにとって、欠かせない存在になっていることがわかる。

アレクサのエヴァンジェリスト・Jeff Blankenburg氏

「アレクサに『アレクサ、今日の天気は?』と問いかけると同時に、その発言はテキスト化されクラウドに上がり、自然言語理解エンジンに取り込まれます。このエンジン内で、テキストの意味を翻訳してユーザーの意志を理解し、天気情報をユーザーに伝えるというシステムを提供しています」(アレクサのエヴァンジェリスト・Jeff Blankenburg氏)

また、アレクサに組み込まれている「Alexa Voice Service(AVS)」という音声認識機能を他社に解放し、そのプログラムを提供している。そのため、アレクサで使えるサービスはAmazonのものにとどまらず、さまざまなIoT端末や各社サービスとユーザーを、アレクサを介してつなげることができる。

アメリカでの活用例のひとつが、配車サービスを展開しているUberだ。Uberがプログラムを開発し、Amazon Echoでの使用を可能にすることで、アレクサに車の手配をしてもらうことができるという。

展示された「Amazon Echo」

アレクサはさまざまなサービスや、IoT端末のプラットホームとなる可能性を秘めている。今回のAWS Summitでは日本語版の発売は発表されなかったが、その上陸が待ち遠しい。

JBPRESS

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